第18章 ふたりきりのクリスマス
「戯言だ」
カノトの言葉が気に障ったのか、イヌピーはぐっと顔をしかめる。
「果たして神様はどっちの祈りを聞き入れるんでしょうね?」
まるでこの勝負の行方が分かっているかのように、カノトは笑みを浮かべた。
「今日一番の力でぶん殴ったんだけどな。さすがに一発じゃ沈まねぇか」
「マイキー」
「無敵のマイキーはこんなモンか!?残念だ」
「…はぁ、一発もらったのは自分への戒めだ」
「あン?」
ダンッ!!
「え?」
気付いたら大寿は床に倒れている。何が起きたのか分からず、その場にいる全員が目を見開き、驚いた表情を浮かべた。
「ボス?」
「(一瞬、マイキーくんが飛んだ。そして鈍い音がして視界から…大寿が消えた。)」
「大寿(ボス)!!!」
「嘘だろ!?あの大寿が瞬殺…これが"無敵の"マイキー!!!」
「……………」
マイキーの袖をギュッと握れば、振り向いたマイキーがニコッと笑み、顔を前に戻す。
「クリスマスはね、兄貴と場地と走るってキメてたんだ」
「マイキー君」
首辺りをゴソゴソと漁ると交通安全守と書かれた場地のお守りが掛けられている。
「兄貴の形見(バブ)に乗って場地のお守り(形見)持ってさ、雪の中走ったら一緒にいる気がして」
「…形見?」
「兄貴も場地もオマエらも、みんなオレの心(ココ)にいる。だからオレは強くいれる」
「……マイキー」
「さあオマエら!クリスマスは終わっちまったけど、みんなで走るぞ!」
マイキーが背を向ける。
「待てやコラぁあ!!」
「「!」」
「まだ終わってねぇぞ東卍!!」
息を乱しながらイヌピーに肩を担がれた大寿が苛立った表情で鋭い眼光を向けている。
「九井(ココ)!!外の兵隊呼んでこい!!外にいる黒龍精鋭100人が相手だ。テメェら全員ここから帰さねぇ!!!ここで終わりだ。オレは誰にも負けねぇぞコラぁあ!!」
「…大寿。黒龍は強いよ。でも時代は創れねぇ」
「!?」
「オマエは喧嘩が強えぇだけ、心がねえ。東卍(オレら)は時代を創る。黙って見とけ」
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