第17章 助けを求めたのは
突然耳を劈くような大きい音が聞こえ、その場にいる全員が体を跳ねさせた後、驚いた顔で一斉に同じ方向を向いた。
「ド…ドアが破壊された!?」
来た時に鍵を閉めた筈の大きな扉がさっきの衝撃で破壊されたのか、吹き飛んでいた。
「馬鹿言うな!あの扉は頑丈なんだぞ!強い力を加えねェ限り、吹き飛ばねェよ!」
「強い力を加えたから実際吹き飛んだんだろ!?一体何が起きた…!?」
ザワつく男達の驚く様子を無視し、カノトはじっと入口の方を見つめている。
「(嘘……。)」
自分の目を疑った。幻覚じゃないかと錯覚までした。でも確かに"そこ"にいる。助けを求めた『あの人』の姿が───。
「あァ?誰だテメェ?」
「あの野郎じゃねェな」
「……………」
入口の所に立っていた人物は睨みつける男達の話を完全にスルーし、座り込んでいるカノトの前まで歩いて来る。
「どうして…」
"彼"が此処にいる筈がない。自分が拉致された事も、拉致された場所すら知らない筈だ。それなのに今自分の目の前に立っているのは…紛れもない"彼"の姿だった。
「……………」
しゃがみ込んだ"彼"を前にして、じわりと涙が浮かび、視界がぼやける。泣きそうになるのを堪え、口を開きかけた時…。
「助けに来たよ、カノ。」
「っ…………」
にこりと優しく微笑まれた顔と安心させるような声に、今まで耐えていた恐怖や不安の糸がぷつりと切れ、涙が溢れた。
「マイキーくん……───!!」
「口の端切れて血が出てんじゃん…」
顎に手を添え、既に乾いている血を親指で拭い取る。触れた指先が驚くほど冷たかった。
「この場所探すのに手間取って来るのが遅れた。ごめんな?」
「助けに来てくれて…ありがとうございます」
「そんなの当たり前だろ。オマエが助けを求めてんのにオレが助けに来ないわけねーじゃん」
「…マイキーくん」
「ちょっと待ってろ。すぐ終わらせっから」
そう言って立ち上がり、カノトに背を向け、一切の感情を押し殺したマイキーが冷たい目でドスの利かせた低い声で呟いた。
「テメェら…オレの大事なモン傷付けておいて、無事で済むと思ってねェよな?」
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