第17章 助けを求めたのは
「もう動けねェって分かってンのに、あの野郎は容赦なく俺らを殴り続けた。顔は腫れ上がって、歯も折れて、意識だって既にねェのにだぞ?」
「テメェの兄貴はイカれてんのか?」
「は?イカれてんのはお前らの方だろ。子供を学校帰りに拉致って、泣いてうるさかったからって蹴って、私を人質にとって兄さんが断れない理由を付けて呼び出した。大事な家族がお前らみたいなクズに傷付けられて兄さんが黙ってるわけないだろうが。」
「テメェ…ッ」
「あの時兄さんにボッコボコにされて懲りたと思えば、やられた腹いせに昔と同じやり口で兄さんを呼び出して復讐しようってわけ?ふざけんな。お前らの敗けを兄さんのせいにするなよ。お前らが卑怯な手を使ったから兄さんは許さなかったんだ。殺されそうになったのも自業自得だろ」
許せなかった。この男達が今でもマドカを傷付けようとしているのが。昔と同じやり口で自分を拉致し、人質にとってマドカを呼び出そうとしている事が。
「(やられた仕返しに復讐とかダサっ。)」
嫌気が差して、鬱陶しげに顔をしかめる。
「調子に乗ってんじゃねェぞクソガキ!!テメェに説教される覚えはねェんだよ…!!」
キレた男の蹴りが横顔に当たった瞬間、頭の中がかき混ぜられたみたいにグラッと揺れた。
「今日は随分蹴り飛ばされンなァ〜」
「……………」
「お?もしかして泣く?あの時みたいに『うぇぇ〜ん…』って泣いちゃうか?」
馬鹿にしたような笑い声が響き、四つん這いの状態のまま動けなくなったカノトが悔しそうに掌を握りしめる。
「まぁいいや。テメェにはきっちり役目を果たしてもらわねェとな」
「(この人数相手じゃ分が悪い…。流石の私も勝てない。)」
「ほら妹ちゃん。何四つん這いのまま固まってんだよ!とっととこっち向きやがれ!」
「っ………!」
首根っこを掴まれ、体が後ろに引っ張られて尻もちをついた体勢になる。襟元を掴まれたせいで首が締め付けられ、咳き込んだ。
「げほっ!」
「おー悪ぃ悪ぃ。苦しかったかァ〜?」
悪びれもなく男はニヤニヤと笑っている。"殺す…"。涙目になりながらそう殺意を芽生えさせた。
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