第16章 命乞いにはスイーツを。
「そういう格好するとあの野郎に会ってるみたいでスゲー腹立つぜ!」
「…なんか無性にイラついてきた」
「奇遇だな、俺もだぜ」
「おいガキ!あの野郎に会わせろ!」
「…人違いです。さようなら」
「っと…逃げんじゃねェよ!」
「!……───"天誅"。」
後ろ肩を掴まれた瞬間、お決まりの台詞を口に出し、バッと後ろを振り返る。
そして男の顎目掛けて片足を蹴り上げた。
ガッ!!
「!?」
顎を蹴られた男の体は反り返るように宙に浮き、綺麗な円を描いて、背中から雪が積もる地面に叩きつけられた。
「気安く触るな」
男は一発で気絶した。
「このガキ…!!」
持っていた傘を閉じ、両手に持ち替える。捕まえようと手を伸ばしてきた男の手首に向けて傘を思いきり振り下ろす。
ガンッ
「痛ぇぇ!!」
慌てて手を引っ込めた男は苦痛に顔を歪め、痛めた手首を押さえる。そして男が痛みで動けない隙を狙い、今度は傘を横に構え、バッドのように男の横顔目掛けて振りかぶった。
ゴッ!!
「ぐあ…っ!!」
弾き飛んだ男もドサッと地面に倒れ込み、気絶した。カノトは生ゴミを見るような冷たい視線で呆気なくやられた男二人を見下す。
「また兄さんを傷付けるつもりなら絶対に許さない。バッドメリークリスマス。どうか悪夢に魘されて二度と目覚めないように」
頭に降り落ちた雪をパパッと払い、閉じていた傘を開き、差す。その光景を見ていた通行人達が驚いた顔でカノトを見ていた。
「だ、大丈夫ですか…?」
「お騒がせしてすみません。自分は平気なのでお気になさらず。」
心配した通行人が恐る恐る話しかけてきた。カノトはペコッと軽く頭を下げ、迷惑を掛けてしまった事への謝罪を口にする。
「おい!!」
「!」
遠くの方から男達の仲間と思われる不良達が数人走って来るのが見えた。流石にヤバいと危機感を感じ、その場から慌てて逃げ出す。
「おい!!大丈夫か!?」
「一体何があった!!」
「う…あいつだ…」
「あいつって誰だよ?」
「"皇帝"の妹にやられた…!!」
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