第16章 命乞いにはスイーツを。
「(さて…早くプレゼントを買いに…)」
「あ?宮村望…?」
「!」
歩き出そうとした時、ふと後ろから兄の名前をフルネームで呼ばれ、思わず振り返る。
そこにはガラの悪い二人組みの男がいて、驚いた顔でカノトを見ていた。
「(誰?兄さんの知り合い?)」
「あー…じゃねェか。明らかに中坊だもんな。けど顔は高校ン時のあの野郎にそっくり…」
「他人の空似だろ」
「その割には似すぎてねェ?」
「…そう言われてみれば確かに似てる」
二人の男の訝しげな眼差しにカノトは戸惑う。
「(こんなガラの悪い人達が兄さんの友達…なワケないよね?じゃあ…何でこの人達は兄さんの名前を知ってたの?)」
すると観察するようにじっと凝視していた左側に立つ男が思い出したように言った。
「もしかしてお前…"あん時のガキ"か?」
「え……?」
「ガキ?」
「ほら、あいつに妹いただろ。学校帰りに拉致ったガキだよ」
「あ…あああーッ!!思い出した!!」
「っ………」
「そうだよコイツ!!あの時ピイピイ泣いてうるさかったガキ!!」
右側に立つ男も驚いた声で叫び、カノトを指差した。
「はぁーこんな所で会うなんて奇遇だなァ」
男のニヤけた笑みが突き刺さる。
「何年ぶりだ?"あの日"以来だもんな?」
「よォ…元気だったかよ、"がきんちょ"。」
ドクンッ
「(まさか…この人達…)」
カノトの脳裏に"あの日"の記憶がフラッシュバックする。
『あー!!うるっせぇなクソガキ!!』
『大人しくしねェと痛くすんぞ!?』
「(昔私を拉致した不良…!?)」
「"皇帝"は一緒じゃねェのかよ?」
「(確かコイツが私を蹴った奴!!)」
唯ならぬ雰囲気に道行く通行人達が不思議そうな顔をしながら通り過ぎて行く。
「(最悪…何で会っちゃうの。)」
カノトは顔をしかめた。
「まさかクリスマスの日に顔すら見たくもねェ奴の妹に会っちまうなんてなァ」
「つーか何で男の格好してンだ?」
「あいつの真似でもしてんだろ」
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