第16章 命乞いにはスイーツを。
「そうだろ?宮村カノト。」
「名前までバレていらっしゃる…」
「へぇーカノトって言うのかオマエ。イケメンの割にクソ面白くもねー名前。」
「名前に面白さ必要ですか!?」
「なぁイヌピー、こいつどうする?」
「(え?"どうする"とは?スイーツあげたんだから見逃してくれる約束では??)」
「ここら一帯はオレらの縄張りだ。この辺でのさばってる他チームの奴がいたら殺せってボスに言われてる」
「ちょ、ちょっと待ってください!!」
「ん?」
「スイーツあげたじゃないですか!!僕を殺すんならスイーツ返してください!!」
「コレ返したらオマエを殺すって事になるけど構わねぇんだな?」
「殺されたくないです!!」
「どっちだよ」
「そのスイーツ高かったんですよ!?でも今日は腹いせに兄の目の前で食ってやろうと思ってたのに貴方達が殺すだの言うから命乞いの為に仕方なく差し出したんです!!」
「あ?腹いせ?」
「絶賛喧嘩中なんですよ!だから悔しがる顔の兄さんを拝みながら食べたかったのに!!貴方達に目を付けられたせいでそれもパーですよ…!!」
いつもはマドカの分も買うのだが、今は絶賛喧嘩中な為、一人分のスイーツしか買って来なかった。マドカの悔しがる顔を見ながらスイーツを食べようと思っていたのに、それもこの二人に出会ったせいで終わってしまった。
「兄さんとは喧嘩中だし、貴方達には殺すとか言われるし、もう散々ですよ!!しまいにはスイーツまで取られるし色々理不尽過ぎる!!」
溜まった怒りを吐き出せば、二人は驚いた顔を浮かべている。ハァハァと乱れた呼吸を繰り返していると、"くっ…"と笑いが洩れた声が聞こえた。
「?」
「っはは!!オマエ面白いな宮村カノト!!」
「は?どこに面白い要素が…」
「喧嘩の腹いせに兄貴の目の前で食って悔しがる顔を拝んで優越感に浸るとか子供かよ」
「うっ…。どうせイヌピーさんには僕の気持ちなんか分からないですよ!!」
はぁっと呆れた溜息を吐かれ、ぐうの音も出ず、プチ逆ギレを起こす。すると"うるさい"とピシャリと言われ、睨まれた怖さでピシッと固まる。
.