第1章 タイムリープ
背中から地面に叩きつけられた男は呆気なく気絶した。通行人達は驚いた顔で両手をパンパンと払うカノを見た。
「“男のクセに”女の背負い投げで気絶するなんて弱っちぃなぁ」
目をぐるぐると回し、気絶した男にフッと笑い、鞄を拾い上げる。そしてカノは友達の家へと向かった。
✤ ✤ ✤
《都内での東京卍會の抗争は激化する一方、再び一般人にまで被害が。》
「ウソだろ?マジかよ」
《犠牲者は数名。内、死亡者2名。》
《死亡したのは橘直人さん。25歳。》
「橘直人…?」
《そして橘日向さん。26歳。》
寝転びながらニュースを見ていたタケミチは、彼が中学時代に付き合っていた人生唯一の彼女・橘日向が死んだと知り、食べていたポテチをポロッと落とす。
ピンポーン
インターホンが鳴り、気だるげに体を起こし、“はいはい…”と面倒さそうに言いながらドアを開けたタケミチの前に───。
「美女が現れた…!!」
「何言ってるの?」
「あ…いや、何でもないデス」
紫色の瞳を持つ美女、宮村心叶がいた。
「こんにちは、タケミチくん」
「カノちゃん…」
「ちゃんと生きてたね?」
「そっちこそ」
「ご飯食べた?」
「…まだだけど」
「奢ってあげるからどっか食べに行こ」
「マジ?」
「どうせタケミチくんのことだから寝転びながらポテチでも食べてたんでしょ?」
「何故分かる!?」
「何年友達してると思ってるの」
「準備するからちょっと待って!」
「急がなくていいよー」
“外で待ってるね”とタケミチの準備に時間が掛かりそうなのを見通して、カノはアパートの下で待つことにした。
タケミチは慌てて準備を始める。
「そういやアイツ…目の下に隈あったな」
“また眠れなかったのかな…”とカノの寝不足を気遣うタケミチ。
「あの人がいなくなった世界か…」
ポツリと小さく呟いたタケミチは眉を下げ、悲しそうな顔をしたがすぐに支度し終え、アパートの下で待つカノの元へと急いだ。
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