第15章 届かない想い
「…臆病な勇者(私)の話を聞いておくれ」
「しゃあねェな。英雄様が聞いてやる」
"だから話してみ?"と優しく諭され、その言葉に甘えることにした。マイキーとのデートを終えてマンションの前に着いた所から話した。
「───という事なのですよ…」
「…そんな事があったのか。マドカさん昔から不良とかそういうの嫌いだもんな。オレだって未だに良い顔されねェし…」
「兄さんあれでもタケミチくんの事はほんのちょびっとだけ認めてるんだよ?」
「マジで?」
「だって会っても追い返されなくなったでしょ?私の家に来る時だって嫌そうな顔はするけどお茶とか出してくれるし」
「顔と行動が一致してねーんだよなぁ…。けどオレも最初はスゲェ睨まれただろ。それこそマイキー君と同じで"二度と来んな"って言われた時はマジでオマエん家に近寄らねぇって決めてたからな」
「本当に家に来なかったよね」
「マドカさん怖かったし」
「見た目は不良っぽいのにね?」
冗談を言って笑い、すぐに表情を沈ませる。
「兄さんも昔から苦労してたから。道歩くだけで不良に絡まれて喧嘩を売られて。買ったと思いきやまた売られて喧嘩して…」
「マドカさん喧嘩強ぇからな。マジで『皇帝』ってあだ名に相応しいわ。いや、皇帝って云うよりは『喧嘩の申し子』的な…?」
「あはは。"喧嘩の申し子"かぁ。」
「でもマドカさんはオマエが大事なんだな」
「過保護なだけだよ」
「だから…心配し過ぎちゃうんだな、きっと。オマエの背負ってきた苦しみや辛さを一番近くで見てきた人だから」
「!」
「オマエが傷付くのが怖いんだ」
「……………」
タケミチに言われ、目を伏せる。
「って…なんかごめんな!話聞いてやるとか言った割になんのアドバイスもしてやれなくて!そんなに深刻だとは思ってなくて…!」
「ううん…大丈夫。タケミチくんに話したからかな、少し心が軽くなった気がするよ」
「…これからどうすんの?マドカさんに会うなって言われたんだろ?マイキー君から連絡とか来てねぇの?」
「マイキーくんからは…来てない。電話も…していいのか…分からない。でも…こっちから掛けても、出ないような気がする…」
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