第15章 届かない想い
「……………」
カノトが出て行った扉をじっと見つめる。小さく溜息を吐いたマドカは携帯を出し、写真フォルダを開いた。
「…"嫌い"だってよ。どうしたもんかな…真一郎。あいつに完全に嫌われたよ。お前んトコの弟(ガキ)を好きになっちまったんだとさ」
そこには鬱陶しげに顔を逸らすマドカの肩に腕を回し、笑う真一郎が写っている。
「お前の弟と俺の妹が恋仲になるなんて思わねぇだろ普通…。まさか…お前が引き寄せたのか?なぁ…真一郎───。」
聞いても当然返事は帰って来ず。マドカは辛そうに顔をしかめる。
「何でお前の弟は不良なんだよ。しかも暴走族の総長って…。うちの妹と接点なんてねェはずなのに…なんで…出会っちまうかね」
「本当は分かってんだ。全ての不良が悪いわけじゃない。中にはお前みたいに良い奴だっている。それは…分かってるつもりだ。」
「でもダメなんだ。あの時みたいにカノが傷つけられたら…泣いてしまったらって考えると…どうしても受け入れられない」
ぐっと眉間を寄せ、辛そうな表情で目を瞑るマドカは携帯を持つ手に力が入る。
「俺はずっとあいつを守ってきたつもりだった。あいつは弱いから…俺が守ってやんねェとって。でも…"守られる側"じゃなくて"守る側"になりたいって言ったあいつの目は本気だった。本気でお前の弟を守りたいってハッキリ告げたんだ」
マドカはふと笑いを洩らす。
「カノはあいつと一緒に幸せになりたいらしい。例え不幸の連鎖が続いても、それを二人でゆっくり乗り越えて行くんだとさ」
いつの間に強くなったのか…とマドカは驚きを隠せず、切なげに笑う。
「幸せだって言ってたよ。お前の弟と一緒にいて…すごく幸せだって。お前の弟のクセに俺の妹を夢中にさせるなんて生意気だな」
はんっと鼻で笑い飛ばす。
「けど…ちゃんと大事にしてくれてるとは思う。あいつの嬉しそうな顔がその証拠だ。俺もあいつに嫌われたままじゃ嫌だからさ…俺がお前の弟を認められるように…上手く引き合わせてくれよ、真一郎。」
マドカは眉を下げ、今は亡き親友の写真に笑いかけた。
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