第15章 届かない想い
マイキーの顔が浮かび、ぎゅっとネックレスを握る。
「そんな嬉しそうな顔するなよ…」
マドカの表情が悲しげに歪められた。
「マイキーくんは私の知らない世界をたくさん教えてくれる。私だけが楽しむんじゃなくて、二人で一緒に楽しめる世界を見せてくれるんだ」
「二人で一緒に…」
「私が見た事もないような楽しい世界をマイキーくんはくれるの」
「!」
その時、マドカの脳裏に浮かんだのは"親友"の言葉だった。
『オマエがまだ見た事もねェようないろんな世界をオレが見せてやるから楽しみにしとけよ!』
「………………」
「中学生の恋愛なんて馬鹿馬鹿しいと思うかもしれない。所詮は"恋愛ごっこ"をしているだけだって笑うかもしれない。でも…本気なの。私は本気でマイキーくんが好き。だから兄さん…お願いします。私とマイキーくんの仲を認めてください」
泣きそうな声と顔で頭を下げる。目頭に浮かんだ涙が零れ落ちそうだった。それでも唇をキュッと結び、堪える。
「……………」
頭を下げたままのカノトの体が震えている事に気付いていた。マドカは眉を下げ、悲しみと切なさが混ざったような顔で、カノトをじっと見つめている。
「…お前がどんなにあいつが好きでも、俺はお前達の仲を認める事はできない」
「兄さん…!」
「俺の決断は変わらない。どんなにお前が頭を下げても…な。」
くるっと背を向ける。
「部屋に戻れ。この話はもう終わりだ」
「っ…どうして…分かってくれないの…っ」
あまりのマドカの酷さに涙が溢れた。
「明後日から冬休みだろ?明日、学校が終わったらすぐに帰って来るように。携帯は敢えて没収しない。そこまでお前の自由を縛るつもりはないからな」
「ひどい!!兄さんはマイキーくんが本当はどんな人か知らないからそんな酷い事が言えるんだ…!!」
「知りたくもないな。不良の事なんて」
「っ…………」
カノトはショックで目を見開いた。どう頑張ってもマドカに思いは届かなくて、悔しげに顔を歪め、マドカの背中を睨む。
「もういい!!兄さんなんて嫌い!!」
そう言うとカノトはリビングを出て、自分の部屋へと走って行った。
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