第15章 届かない想い
「私はもう、あの頃みたいに誰かの助けを待って泣いている弱い女の子じゃない。守りたいものがあるから強くなりたいの。私も"守られる側"じゃなくて"守る側"になりたい」
マドカは初めて聞く妹の本心に目を見開く。
「私はマイキーくんに守られてる。どんな時だってあの人は私のことを守ってくれる。だから私もマイキーくんを守りたい。彼の力になりたいの!」
「…何であいつなんだよ。何で不良なんかを好きになるんだ。お前にはもっと良い奴がいる。お前をちゃんと幸せにしてくれる奴は…」
マドカの言葉を遮るようにカノトは無言で首を横に振った。
「こんな事言ったら笑うかもしれないけど…マイキーくんと出会えたのは運命だと思ってるの」
「運命…?」
「きっと誰かが引き合わせてくれたんだよ」
「!」
マドカは目を見開いた。
「他の誰かじゃダメなの。マイキーくんとじゃなきゃ…幸せになれない。私はあの人を好きになって不幸だと思った事は一度もないよ」
カノトは優しい笑みを浮かべる。
「むしろ今、すごく幸せなの」
「それは…あいつがいるからか?」
カノトは頷く。
「マイキーくんは私をちゃんと幸せにしてくれる人だよ。不良だから好きになったんじゃない。私は彼の内面に惹かれたの。兄さんみたいに外見だけで判別したりしない」
「!」
「それに…例えマイキーくんが私を不幸にするとしても、それでも彼と一緒にいたい。二人で不幸の連鎖を乗り越えて、絶対に二人で幸せになってやるんだから」
「口だけではどうとでも言える。あいつがこの先もお前を幸せにできる保証はどこにもない。ずっとお前を守ってくれる保証だってないだろ?」
マドカはどうしても認めたくないのだ。大事な妹の想い人が不良だという事実を。認めてしまえば…"不良"が良い奴だと認める事になる。幼い頃、妹が不良達によって傷付けられた。その過去があるからこそ、マドカはマイキーを認めない。例え…どんなにカノトがマイキーを庇護してもだ。
「マイキーくんは私が助けてって言ったら、絶対に助けに来てくれる。"もう大丈夫だ"って安心させるような顔で笑って、私の事を守ってくれるの」
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