第15章 届かない想い
『う…うぇぇぇん…っ』
強烈な痛みに動けないでいた。ポロポロと涙が溢れ、体まで小刻みに震える。
『悪ぃな宮村ァ。テメェの妹蹴っちまったよ。痛みと恐怖で泣いてらァ。』
『おい…腕から血出てんぞ』
『何も蹴る事ねーだろうに』
『あ?知るかよ。』
『おーい、大丈夫か?がきんちょ。』
『ひっく…うぅ…っ…にい、さ…兄さぁぁん…ひっく…』
『あー地面に落ちてたガラスの破片で切ってんな。つーか今の蹴りだけで傷だらけじゃん!』
『そんなに強く蹴ってねーよ。おいガキ!いつまでもピイピイうるせぇんだよ!!泣くなっつっただろうが!!』
苛立ったように男が叫ぶ。
『ひっく…兄さん助けてぇぇ…!!』
体中が痛くて指先すら動かせない。もう頭が恐怖でパニックになり、気づけばマドカに助けを求めていた。
《…おい。》
『あ?』
《俺の大事な妹を、傷付けたのか…?》
『はっ!だから悪かったってぇ!思わず蹴っちまったんだよ!テメェの妹がうぜぇから大人しくさせただけだ!』
《……………。》
『ほら大事な妹がお兄ちゃん助けてぇって泣き叫んでんぞ〜。助けに来いよ、お・に・い・ちゃ・ん♥』
《テメェらを…───殺す。》
「…それで、私が気を失っている間に兄さんが駆け付けてくれて、不良達を倒しちゃったんだよね」
「倒したっつーか…」
マドカはバツが悪そうに視線を逸らす。
「私もあの時はすごく怖かった。でもね…マイキーくんをあんな人達と一緒にしないで。彼は…とても優しい人だよ」
「優しくても不良は不良だ。お前が痣を作って帰って来た時、どれだけ俺が心配したと思ってる。あんな奴と一緒にいるからお前がまた傷付くんだ」
「兄さんに心配掛けさせた事は本当に悪いと思ってるよ。でも怪我をしたのは私が油断したからなの。マイキーくんのせいじゃない」
「あいつがお前を喧嘩に巻き込んだ。それはお前を傷付けない自信があったからだろ?でも結局あいつはお前を守れなかった」
「違う。マイキーくんが私を止めなかったのは私が"守られるだけの女じゃない"と分かったからだよ」
「!」
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