第15章 届かない想い
『放して!!放してよぉ…!!』
『あー!!うるっせぇなクソガキ!!』
『大人しくしねェと痛くすんぞ!?』
『このガキが本当にあの男の妹なのかよ?』
『間違いねぇ。写真で確認した。でも驚いたな。あの男にまさかこんなかわいー妹がいるなんてさ』
『噂に聞けば溺愛してるらしいぞ』
『はは!"皇帝"の名が聞いて呆れンな!!』
人気のない場所に拉致されたカノは泣きそうな顔でガラの悪い不良達を見た。
『おいガキ』
ビクッ
『めんどくせぇから泣くなよ?テメーは兄貴を呼び出す為の人質だ。それまで泣かずにそこでじっとしとけ』
『お…お兄さん達は兄さんのお友達?』
『はぁ?っくっくっく…。あっはは!!あの男と友達な訳ねーだろ!?』
『そうそう。俺達はお前のお兄ちゃんをぶっ倒す為にお前を拉致ったんだからなァ!!』
男達の笑い声が更に恐怖心を煽る。すると一人の男が携帯を取り出し、どこかに掛けた。
『はーい宮村望くぅ〜ん!久しぶりじゃーん、元気だったかよ?…あ?俺が誰かって?ンな事はどうでもいいんだよ!テメェ今から俺らが指定する場所に一人で来いや』
『(兄さんに電話してるの…?)』
『はァ?テメェに断る権利なんてねェよ!…どうしても来ねェってなら…人質がどうなっても知らねぇぞ?あ?人質って誰かって?そりゃあ…お前の溺愛してる妹でちゅよ♥』
チラリと男がこちらを見た。
『あーあーうるせぇ。ンなデカい声で叫ぶんじゃねーよ。頭に響くだろうが。大事な妹の声聞かせてやろうか?…ほら、お前の大好きなお兄ちゃんだぞ。なんか喋れ』
携帯を目の前に突きつけられる。恐怖で声を出せないでいた。ランドセルの持ち手をぎゅっと掴む。
《……カノ?》
その声を聞いた瞬間、叫んでいた。
『兄さん!絶対に来ちゃダメ!!この人達、私を人質に取って兄さんをやっつけるつもりだよ!!数も多いし武器も持ってる!!来たら兄さん殺されちゃうよ…!!』
『このガキ!!余計な事まで喋んな…!!』
男に蹴られ、小さい体が軽く吹っ飛ぶ。
『うぐっ……!?』
背中から離れたランドセルが開き、教科書やらノートやらペンケースが地面に散乱した。
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