第15章 届かない想い
「兄さん!!放して!!」
「……………」
「そんなに引っ張らなくても自分で歩ける!!」
玄関先でもマドカの掴む手は離れず、乱暴に脱ぎ捨てられた四足の靴がバラバラに散らばる。
「放してってば…!!」
リビングに連れて来られたところでマドカの手をバッと振り払う。
「あいつと付き合ってるのか?」
「…だったら何?」
「今すぐ別れろ」
「は!?意味わかんない!!」
「いいから別れなさい」
「絶対に嫌!!何でそんなこと言うの!?」
「あいつは不良だ」
「っ………!!」
マドカの放った言葉の中にマイキーに対する嫌悪感のようなものを感じ取り、カノトは怒りでカッとなる。
「だから!!あの人を不良ってだけで差別しないで!!」
「必ずお前を不幸にするぞ」
「なにそれ…マイキーくんが私を不幸にするってどうして決めつけるの!?」
「不良なんてのはそんなモンだ」
「いい加減にして!!」
「いい加減にするのはお前の方だ!!」
「っ!?」
珍しく声を荒らげて怒鳴ったマドカにビクッと肩を震わせた。驚いて目を見開くカノトを見てハッてしたマドカは、くしゃりと顔を歪め、どこか苛立った顔をする。
「…急に怒鳴って悪かった。でもあいつはダメだ。不良なんてのに関わってもお前を傷付ける存在でしかない」
「兄さんがそこまで不良を嫌うのは…小さい頃に私が不良に絡まれて怪我をしたから?」
「!」
宮村家を出て兄さんとこのマンションで暮らし始めた頃だ。昔から喧嘩が強くて、他校の不良達から喧嘩を売られる事も多かった兄さんは毎日のようにその人達の相手をしていた。
大人数で学校に乗り込んできた不良達をたった一人でノしてしまう事もあった。その時についたあだ名が『皇帝』。もちろん兄さんの強さは不良の世界に知れ渡り、一躍有名になった事もある。
「その頃だったね。まだ小学生の私が学校帰りに他校の不良達に拉致されたのは」
「っ…………」
マドカの顔が強ばった。
「あの時の事はよく覚えてるよ…」
目を瞑り、拉致された日の記憶を思い起こす。
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