第13章 夢で会えたら
現代で会ったいつぞやのナンパ男を思い出し、イラッとした顔で顔を上げた途端、ピシッと固まった。
「こんなところで一人でかくれんぼ?」
「ま、マイキー…くん…」
「メールの返事も寄越さねぇと思ったら、こんなとこで何やってんの、カノちゃん♪」
「(ひぇっ)」
気付けば、目の前にしゃがみ込んだマイキーがにっこり笑っていて、顔を引き攣らせたカノトを見ていた。
「いや…あの…これには訳が…」
「へぇ……」
「わ…わぁマイキーくん。笑顔が怖い。」
「んー?オレはいつもこの顔で笑ってるけど?」
「そ、そう…ですか…」
「カノこそ顔引き攣ってるけど、どうした?まるで天敵に追い詰められて死を覚悟した小動物みたいにぷるぷる震えてんな?」
「いやぁ…そんなことないですけど…」
ずっとニコニコ笑っているマイキーに怖くなって、後ろに下がろうとするも、壁に当たり逃げ場を失う。
「(完全に捕食される…!!)」
「さてと…」
ガシッと腕を掴まれ、ビクッと体を跳ねさせる。
「ちょっとそこのトイレで話し合おっか♥」
「(誰か助けて!!ドラケンくん!!三ツ谷くん!!気づいて!!)」
助けを求めたカノトの必死のテレパシーは遠くの二人には伝わらず、ズルズルと腕を掴まれ、男子トイレに連行されて行った。
「あーあ、マイキーくんに会っちゃったか。あのままじゃ当分戻って来ないだろうな。せっかくみゃーむら君と仲良くされるチャンスだったのに…残念。」
二人のやり取りを陰で見ていためぐたんが、きゅるんモードの仮面を外し、つまらなさそうに呟いてからその場から立ち去って行った。
✤ ✤ ✤
「で?こんなところで何してんだ?まさか本当にかくれんぼしてた訳じゃねーよな?」
「さすがに見知らぬファミレスで一人かくれんぼしてたら頭のおかしい奴じゃないですか…」
"違いますよ"と前置きをしてからマイキーにこうなった経緯を説明した。
「…なるほどね。つまりオマエはアイツの頼みを断れず、学校に内緒で働いてたって訳か」
「どうしてもとお願いされたので…」
「オマエ優しいもんな。困ってる奴見捨てられねーんだろ?」
「…はい」
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