第13章 夢で会えたら
まだ頭にモヤのようなものが霞がかり、喋る気力すら湧いてこない。だから黙って二人の話を聞いていた。
「マイキーだ」
「!?」
「(マイキーくん?)」
「マイキーは…変わり果てた。東卍が変わったのはマイキーが変わっちまったからだ」
「………、そんな…。他に黒幕がいるんスよね!?稀咲が裏で手ぇ引いてるだけじゃないんスか!?」
「………。オマエが稀咲に捕まってる間にパーちんとぺーやんが殺された。指示したのはもちろんマイキーだ」
その事実にタケミチは目を見開き、驚いた。
「そしてこっちはマイキーの指示じゃねぇと思うが…カノトが半間に襲われそうになった」
「え!?」
「でけー声出すな。カノトが起きる。」
「(目は瞑ってるけど起きてるよ…)」
心の中で一虎にそう伝える。
「大丈夫だったんスかカノちゃん…」
タケミチがチラリと後部座席に目を遣る。
「俺が助けに来なきゃコイツは半間にヤられてただろうな」
「(ホントありがとね…羽宮くん。)」
「あの野郎…マジで殺してやろうかと思った」
怒りをぶつけるようにハンドルを握り締める手に力が入る。タケミチはカノが無事だと知り、ホッと安堵の息を洩らす。
「三ツ谷も数ヶ月前から行方不明…」
「(三ツ谷くんが?)」
「マイキーは東卍の旧メンバーの粛清を始めた。仲間なんてもう信じちゃいない。アイツはもう不良なんかじゃねぇ。マイキーは巨悪だ!!」
「(マイキーくんが東卍のみんなを殺そうとしてる?誰よりも仲間の事を思ってるマイキーくんが?)」
嘘だと信じたいが、夢の中に現れた"彼"はカノを殺そうとしていた。額に突き付けられた拳銃。憎しみや怒りが混ざったような冷たい瞳。思い出すだけで怖い。
「(マイキーくんが怖いんじゃない。銃を突き付けられた瞬間に嫌でも実感した"死"に…恐怖した。)」
「オレもアイツを変えちまった一人…とにかく今のマイキーは本当にヤベぇ奴だ。会って話がしたい。アイツらと離れなきゃダメだって」
「アイツら?」
「稀咲の暴力、黒龍の金。この二つをなんとかしねぇとマイキーが正気に戻ることはねぇ」
.