第13章 夢で会えたら
「……………」
ふと目を覚ますと一虎が運転する車の後部座席に頭を窓に付けて座っていた。どうやら一虎に助け出された後、タケミチと一緒に車に乗ったらしいが疲れ果てて眠ってしまっていたようだ。
「(夢……。)」
何かが頬を伝う感触があった。
「(泣いてたの、私…。)」
紫色の瞳から流れた涙。これは恐怖から流れる涙じゃない。どこか寂しげな目をした"あの人"を救えない自分が不甲斐なくて、悲しいのだ。
「(夢の中で"あの人"に触れられた手は…とても冷たかった。)」
いつも自分に触れる手は温かいハズなのに、夢の中で会った"彼"は…冷たい目を宿し、心さえも閉ざしていたようだった。
「(…白い髪。何の感情も宿っていない瞳。信じたくはないけど…顔も、声も、身体も、間違いなく、あの人だった。)」
それなのに───……
『もう…信じられねーよ』
『夢でオマエに会えたら…』
『絶対にオレが殺すって決めたんだ』
『だから…オレの為に───死んでくれ。』
「……………」
虚空をじっと見つめる。
「(どうして寒さを感じていたのか分かった気がする。あれは…私に対するあの人の憎悪だ。憎くて憎くて堪らないって感情が溢れ過ぎて表に出てきてしまったんだ。)」
太腿に置いて組んでいた両手をキュッと握りしめる。
「(もしかしてあの世界が闇に包まれていたのは…あの人の心が壊れてしまったから?)」
何も見えず、何も聞こえない。視界に映るのは一面真っ黒な空間。どこまでが壁なのかも分からない。もしかしたら壁なんてものは最初から無くて、ずっと歩いていても彷徨い続けるだけかもしれない。
「(私なら…孤独で死んじゃう。)」
だからこそ、思った。
「(彼も今、孤独なのだろうか…。)」
どこにいるの
どうして会えないの
ねぇ…今すぐにでも
あなたに逢いたいんだよ
「(マイキーくん。)」
会いたい
会いたい
逢いたい───………
「一虎君…オレ、記憶が曖昧で…変な事聞くかもしれませんけど、東卍はなんでこんな風になっちまったんですかね…?」
「……………」
タケミチが一虎に質問する声が聞こえた。
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