第13章 夢で会えたら
「っ!?」
突然の行動に慌てて引き剥がそうとしても、首を締めている"誰か"の手に込める力が強くて、逃げる事はおろか、息ができない苦しさで顔を歪める。
「う…ぐ…っ」
「そうやって逃げて逃げて逃げ続けて…オレから離れようとしたんだろ?」
「(何を…言っているの…?)」
「だからオマエはオレの傍にいない」
独り言のようにブツブツと呟かれる声に"誰か"の感情は一切なかった。それが悲しくて、カノは涙を一粒流す。
「…オレが怖いか?」
"違う"と首を振る。
「あ、なた、が…寂し、そうな顔、を…している、から…っ」
「!」
"黙れ"───そう言って"誰か"は苛立った顔でギリッと歯を噛み締めた。
「(まずい…意識が…)」
呼吸が上手く出来ないせいで、意識が朦朧とし始める。視界が閉ざされようとした時、ふと苦しかった首から手が放れた。
「っ!…ごほっ!げほっ!…はぁはぁっ…!」
肺に酸素を取り込み、呼吸が楽になる。歪めた顔で必死に呼吸を繰り返すカノを、"誰か"は無表情で冷たく見下ろす。
「なァ…オマエはもうオレのモンじゃなくなったのか?だから会いに来てくんねェのか?」
「そんなこと…」
「それとも他に好きな奴ができたか?」
「私は…!」
"あの頃から貴方だけが好きです"
そう口にする前に、"誰か"は強引にカノを押し倒す。ダンッと背中を打ち付けた痛みで顔をしかめた。
「急にオレの前からいなくなりやがって。何も告げずに消えたりしねぇって言ったのは嘘だったのか」
「(話が全然見えない…。私はこの人の傍から黙っていなくなったの?)」
「オマエだけは…信じてたのに。オレの事が嫌いになったんだろ?」
「違う!!」
「もう…信じられねーよ」
「話を聞いて…っ」
「夢でオマエに会えたら…」
額に突き付けられたのは"冷たい感触"。
「絶対にオレが殺すって決めたんだ。」
それが拳銃だと分かるまで、さほど時間は掛からなかった。
「だから…オレの為に───死んでくれ。」
バンッ!!
そこでカノの意識は途絶えた…。
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