第13章 夢で会えたら
真っ黒な夢。どこを見渡しても黒で塗り潰されていて、どこまでが壁なのか分からない。自分の目がおかしいのか、視界に映るのは果てしなく続く黒の世界。何も見えない、何も聞こえない。ただ…何故か寒かった。
「(…夢にしては不気味。風が吹いているわけでもないのに…身体が寒い。)」
ギュッと両腕で自分の体を抱き竦める。それでも一向に寒さはおさまらない。カノは一人でいる不安と恐怖で、心が押し潰されそうだった。
「(早く目を覚まさないと…)」
そう強く思うも、意識が現実の世界に引き戻される感覚はない。どうしたらいいのか分からず、その場に蹲った。
「(いや…『色のない世界』なんて…。真っ暗で何も見えない…何も聞こえない。お願い…私を独りにしないで。)」
ギュッと目を瞑った時、微かに足音が聞こえ、ハッとして目を開ける。
「(足音…?)」
ついさっきまで人の気配すら全く感じなかったのに、何故自分以外の足音がするのだろうか。しかもその静かな足音は、こちらに向かって歩いているのか、近付くにつれて徐々に大きくなっている。
「(…何、誰かいるの?やだ…怖い。)」
見えないからこそ、敏感に反応する。警戒心を張り巡らせ、その足音だけに意識を集中させた。
「(…こっちに来る!)」
得体の知れない存在に怖くなり、泣きそうになれば、足音はピタッと鳴り止んだ。不思議に思い、顔を上げる。
「!」
そこに───"誰か"はいた。
「っ…………」
息を呑む。カタカタと震え、じっと見ていると、その"誰か"のシルエットがうっすらと浮かび上がり、そして…カノの視界に、現れた。
「!」
白髪の短い髪をしたその"誰か"は感情が無い、死んだような目でカノを見ている。一瞬で"ヤバい奴"だと理解ったカノは立ち上がり、ジリ…っと足を下げて逃げようとした。
「"そうやってまたオレから逃げんのか?"」
「え……?」
聞き覚えのある声に驚いて"誰か"を見た。
「まさか…貴方は…」
そう口にした途端、"誰か"の手が伸び、カノの首をグッと掴んだ。
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