第12章 狙った獲物をオトす為に
「良い女過ぎて見惚れてただけだ」
「!!」
照れるように頬を紅く染めたカノの反応を見て、一虎は切なげにふと微笑んだ。
そして表情を消し、顔を前に戻す。
「千冬が死んだ。」
「え!?」
「殺したのは稀咲だ」
「(稀咲鉄太…!!)」
「そしてタケミチは足を撃たれた」
「彼は無事なの!?」
「そこで転がってる」
振り向いた一虎の視線を追えば、左太腿に包帯を巻いた傷だらけのタケミチが寝ていた。
「タケミチくん…!」
慌てて彼の側に駆け寄る。
「一体どうしてこんな目に…」
「"裏切り者(ユダ)"探しだ」
「ユダ……?」
3日前、東卍が運営する会社に同じ日に数箇所同時に警察によるガサ入れがあった。そこで疑いを掛けられたのが千冬とタケミチだ。
千冬は場地が死んだ日の事を未だに忘れず、12年経った今でも、一人でずっと場地の仇を討とうと稀咲に復讐(リベンジ)を誓っていた。
だからタケミチは何も知らないのだ。"タケミチは何も知らないし、関係ない"と左足を撃ち抜かれたタケミチを必死に庇うも、稀咲はそれを聞き入れず、タケミチに最期の言葉を残し、稀咲に銃殺されてしまった。
タケミチも稀咲に殺される前に一虎が救い出したらしい。
「うぅ…千冬くん…っ」
「……………」
そしてタケミチが目を醒ます。
「痛って!」
「タケミチくん!」
「!カノちゃん…?」
ズキズキと痛む足を押さえながらタケミチはカノを見た。
「……応急処置はした」
「え?」
「羽宮くんがね、助けてくれたんだよ」
「一……虎君?」
驚いた顔で一虎を見た。
「お久しぶりです…」
ゴッ
「!?」
「羽宮くん!?」
急に一虎がタケミチを殴った。
「一虎く…」
ゴッ
今度は顔面に一発。そして蹴りが一発。
「ちょ、ちょっと羽宮くん!!」
慌てて止めに入ろうとするもまだ力が入らず、倒れるタケミチを手加減なしに蹴り続ける一虎をオロオロとした顔で見た。
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