第12章 狙った獲物をオトす為に
「これから勇者チャンは身も心も、オレのモンになっちまうんだぜ?」
「や…だ…」
「たっくさん、愛し合おうな───?」
半間が折り重なって来る。
「(マイキーくん…助けて。)」
呼んでも助けに来ないことは知っている。現代のマイキーは今どこにいるのかさえ分からない。ただ虚しさだけが…心を支配する。
その時、部屋の明かりが消え、視界が真っ暗になる。
「何だ!?───ぐあっ!!」
ドサッと半間が何者かに蹴り飛ばされ、ベッドから落ちた。
「(え!?何!?停電…!?)」
「担ぐからな。声は出すなよ」
「(…誰?)」
暗闇の中、半間以外の男の声が聞こえ、ふわっと身体が抱き抱えられ、拘束された手のまま、どこかに連れ出される。
カノは半間から解放された安心感からか、再び意識を手放した…。
✤ ✤ ✤
「…………」
ゆっくりと目を醒ます。眠っている間に誰かが上着を掛けてくれたみたいだ。
「(…一体、誰が…)」
「…気分はどうだ?」
「え?」
呼びかけられ、そちらに顔を向ける。すると長い黒髪の男が背を向けて立っていた。その姿はまるで──……。
「…場地さん?」
幻覚でも見ているのだろうか。目を見張ると、その男はスッと振り返る。
「羽…宮くん?」
リンと鈴のピアスが揺れた。
「約束を果たしにきた」
「!」
『刑期を終えたら僕に会いに来て』
「これでオマエに呪われずに済むな」
冗談交じりに笑う一虎にカノは嬉しくなって涙を浮かべる。
「約束、守ってくれてありがとう」
「…すぐに助けてやれなくて悪かった」
歩み寄って来た一虎が、片膝を付き、カノの頬に触れる。
「ううん…羽宮くんが助けに来てくれなかったら、あのまま半間に…」
両手を縛っていた紐は解かれていた。きっと一虎が解いてくれたのだろう。あの時の恐怖がまだ記憶として残り、ギュッと目を瞑って自分の身体を抱きしめる。
「(怖かった。抵抗もさせてくれなくて…少しでも変わったと思った私が馬鹿だった!)」
「……………」
すると恐怖で震えるカノの体を、一虎が黙って抱きしめた。
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