第12章 狙った獲物をオトす為に
「……………」
目が醒めると、まず最初に天井が映った。ボーっとする頭で天井を見つめていると、ギシ…とベッドの沈む音が聞こえた。
「え!?」
「よォ勇者チャン。目が醒めた?」
「っ………!!?」
何故この男は上半身裸なのだろう。そう思ったカノはある事に気付き、顔を真っ青にさせた。
「(両手が頭の上で拘束されてる!?)」
自分の手首が紐で硬く縛られ、焦って解こうとしても紐が皮膚にくい込み、痛みで顔を歪める。
「あーあ、そんなに暴れたら勇者チャンの手首に傷が出来ちゃうじゃんよ」
「な、何して…何でこんなこと!?」
「今でもオレは勇者チャンしか目に入ってねェよ?顔も見たくねェなんて…そんな悲しいこと言うなよ」
ニヤリと不気味に笑った半間は、怯える目を向けるカノの上に覆い被さる。
「ひっ……!」
カノは顔を真っ青にさせ、小さな悲鳴を上げた。
「わ、私のこと…諦めてくれるんじゃ…なかったの…!?」
「諦める?」
「だから笑ってくれたんじゃ…」
「あぁ、あれは…"何でそんな残酷な事言うんだよ"って意味で笑ったんだ。素敵な人と巡り会う?勇者チャン以上に最高の女なんかいる筈ねェだろ?それに、オレはもう…"素敵な人"と巡り会ってんだ。カミサマがくれた『運命の出会い』ってやつがな」
「いや!触らないで!」
頬に触れようとした半間の手を顔を背けて避ける。
「(もっと疑うべきだった!!あのケーキには薬が入ってたんだ!!半間が変わった…?数分前の自分を殴りたい…!!)」
ギュッと目を瞑る。
「この紐を解いて!!」
「それは出来ねェ相談だな。解いたら勇者チャン逃げちまうだろ?せっかく捕まえたのにまた逃げられるとか悲しいじゃん」
「お願いだから外して…!!」
「勇者チャンからのお願いは聞いてやりてぇけど…無理だなぁ。オレはもう絶対に勇者チャンを逃がしたくねェの。な?分かってくれるよな?」
「(相変わらず狂ってる…!!)」
早くなんとかしないと…!!
体をよじって、半間から逃げようとするが、覆い被さっている為、ベッドから動く事ができない。
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