第12章 狙った獲物をオトす為に
「謝る…?」
半間はベッドの近くの椅子に腰掛けた。
「オレはこっから動かねェ。勇者チャンもそっから動くな。今日は勇者チャンを怖がさせねぇって決めてンだ」
「(半間…どういうつもり?)」
警戒しながら半間を睨んでいると、眉を下げ、悲しそうに笑う。
「オレが信用できないのも当然だな。勇者チャンを怯えさせる事しかしてこなかった。あの時のオレは…本当に勇者チャンしか目に入らなかったんだ」
「……………」
「なぁ勇者チャン…オレの事どう思ってる?」
「え?」
「顔も見たくねェって思ってるだろ?」
カノは静かに頷く。
「本当に悪かった」
「!!」
半間が頭を下げる。
「勇者チャンが怯えてんのに気付かないフリをしてたんだ。怖がっていても勇者チャンに対する想いは消せなくて…。だから勇者チャンを執拗に狙おうとした」
「……………」
「今更謝っても許してもらえねェのは分かってる。でも謝らせてくれ。今まで怯えさせて悪かった。元はと言えばオレが勇者チャンを好きにならなければ勇者チャンに執着する事もなかったんだ」
「(あの時とはまるで別人みたい…。本当に反省してるみたいだし…)」
頭を下げたままの半間に声を掛ける。
「あの…顔を上げて。今更謝られても困る」
「……………」
「貴方が本気で申し訳ないって思ってくれてるだけで少しは気が楽になる。あの頃は…本当に怖かったの。貴方に執拗に迫られて、いつか捕まるんじゃないかって…怯えてた」
胸の前で掌を握り、視線を床に落とす。
「だからもう…謝らなくていいから、私のことは綺麗さっぱり諦めて。貴方なら私以上に素敵な人と巡り会えるよ」
「……………」
顔を上げた半間は軽く微笑んだ。
「相変わらず優しいな…勇者チャンは。オレの心配までしてくれるとか…天使かよって」
「人間ですけど…」
「立ちっぱなしだと足が疲れるだろ?お詫びと言っちゃなんだが、そこのテーブルに勇者チャンの好きそうなケーキが入ってる。良かったら座って食べてくれ」
テーブルにはケーキの箱が置かれていた。蓋を開けると美味しそうなショートケーキが一つ、入っている。
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