第12章 狙った獲物をオトす為に
ホテルに着き、フロント係に名前を伝えると『宮村様ですね。お話は伺っております。こちらが部屋のキーです』と部屋番号が書かれたキーを渡された。
エレベーターを使い、キーに書かれた番号の部屋に着き、キーを差し込み、部屋に入る。
「…タケミチくん、こんな高級ホテルの一室を取れるほどのお金、持ってたっけ…?」
"万年金欠のダメフリーターなのに"
悪気は一切ないのだが心の中で毒づいた。
「わぁ…!景色が綺麗!」
大きな窓ガラスから見える景色にカノは感動し、目を輝かせる。
「夜空も星が散りばめられてるし、人があんなに小さく見える…」
窓に両手を付け、下を見下ろす。
ガチャッ
「!」
見とれていると扉が開く音が聞こえ、タケミチが来たのだと振り返る。
「あ!タケミチくん!あのね…!」
だがそこに現れた人物を見た瞬間、カノトから笑顔が消え、綺麗な紫色の瞳が大きく見開かれた。
「コンバンハ───勇者チャン…」
「!?」
ふっと口許を吊り上げ、半間は笑う。驚いたカノの表情が恐怖で凍り付いた。
「な、何で…貴方が…」
「嬉しいなァ、まさか"あんなメール"で勇者チャンがオレに会いに来てくれるなんて!」
「メール…?」
「勇者チャンに送っただろ?」
「え…でも…タケミチくんからしか…」
「花垣武道のスマホを遠隔操作で少し"いじらせて"もらった。今の時代、悪質なウイルスには気をつけねェとなァ…?」
「(遠隔操作?ウイルス?)」
「また会えて嬉しいよ、勇者チャン」
半間はニコリと笑った。
「タケミチくんのスマホを勝手に使うなんて最低!!そんなの犯罪じゃない!!」
「こうでもしないと勇者チャンはオレに会ってくれなかったろ?」
「当たり前でしょ…!!」
「だから花垣武道のスマホを使って勇者チャンを上手く誘導したんだ。アイツからの呼び出しなら必ず応じると思ったからな」
「(最悪…。現代に戻って来てすぐに半間と再会するなんて…!)」
「そう怖い顔しないでくれよ。今日は勇者チャンを捕まえたりしない」
「!」
「ただ…謝りたいんだ」
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