第12章 狙った獲物をオトす為に
「(ニヤリともしないし、捕まえようともしないなんて…)」
カノトは混乱したが、内心ホッと胸を撫で下ろした。
「………"血のハロウィン"。芭流覇羅約300vs.東卍約150。この圧倒的に不利な状況の中、オマエら一人一人の頑張りで勝利を掴み取った。負けた芭流覇羅の副総長、半間修二から挨拶がある」
「(挨拶…?)」
「芭流覇羅の半間修二だ。芭流覇羅はずっと頭(トップ)がいなかった。だから…この戦いに負けて東卍の下につく事にした」
「は?」
「どういう事?」
「(嘘でしょ…)」
「芭流覇羅は東京卍會の傘下に降る!!!」
「え!?」
その決断にメンバー達もザワつく。
「え!?芭流覇羅300人が東卍(ウチ)の傘下って…つまり東卍が450人に…!?」
「すげーな東卍!」
「どこまで膨れ上がんだ!?」
「ワクワクすんな!」
「東卍バンザーイ!!」
拳を突き上げ、"東卍コール"が響き渡る。
「(半間が私の距離に近づいた…。あれだけ会いたくないと思っていた奴が…東卍の傘下に降るって…私はまた、苦しめられるの?)」
カノトは絶望したように顔を俯かせる。半間は自分に執着している。捕まえて、手元に置いておこうとしている。半間から逃げ続ける為に距離を離したのに…何故、一気に縮まるのだろうと、ショックを受けた。
「今回オレとマイキーを繋いでくれた奴がいる。そいつのおかげでこの話が成立した!前に出てきてくれ!稀咲鉄太!!」
半間に呼ばれた稀咲が石段を登り、マイキーを後ろに半間の隣に立つ。そして半間とマイキーが握手を交わす。
「(場地さんが命を掛けて守ったのに!東卍が稀咲に乗っ取られる。これじゃあ、また巨悪化した東卍になっちゃう…)」
「…また、失敗かよ…」
隣でタケミチが絶望した顔で呟いた。
「話がもう一つある。"血のハロウィン"で得たモノもあれば、失ったモノもある。壱番隊隊長、場地圭介が死んだ」
「(場地さん…)」
カノトはギュッと掌を握る。
「オレらはこの事実を深く反省し、重く受け止めなきゃいけない。…後はオマエから言ってくれ。壱番隊隊長、松野千冬。」
「……………」
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