第11章 やっと手に入れたモノ
ボスっという音がし、マイキーに組み敷かれたカノトは驚いた顔でマイキーを見る。
「何で押し倒すんですか…?」
「オマエを逃がさないように」
「…逃げませんよ」
「うん、知ってる。けどこうして指先を絡ませてシーツに縫い付けておかないと…本気で怖いって思った時でも逃げらんねーだろ?」
「……………」
「オマエをもう、手放してやれねーから、傍にいさせるために、こうして逃げ道塞いでやんねェと」
「僕はマイキーくんの傍を離れません。例え貴方が僕を突き放そうとしてもです。その覚悟を…マイキーくんは受け取ったじゃないですか」
"信じてないんですか"と少し怒った顔で言うと、マイキーはカノトの頬に触れる。
「信じてるよ。オマエがオレから逃げたりしねェってのも、傍から離れたりしねェってのも、分かってる。だから…怖いんだ」
「!」
「オマエの事が好きすぎて…大事にし過ぎて…オレが壊しちまったらどうしようって」
微かに震えた声でマイキーは言った。
「一虎の時も…そうだ。抗争を止める為にオマエがアイツと一緒になる事を選んだらどうしようってすげェ焦って、怖かった…」
「……………」
「オマエ優しいから…オレらを助ける為に一虎の手を取るんじゃないかって…けど、オマエはそれをキッパリ断ってくれた」
「当たり前じゃないですか。僕はマイキーくんの傍にいるって決めたんです。今更誰かの傍で生きるなんて有り得ませんよ」
「…カノのそういうとこ、すげー好き。決心が揺るがないトコとか、オレの為に決断してくれたトコとか。すげェ愛しいって思う」
「そ、それは褒めすぎじゃ…」
「だからさ…オレの我儘、一個だけ聞いて」
「?」
切なげに伏せられた目を向けるマイキーの顔がゆっくりと近づいてくる。
「(っ、キスされる…!?)」
思わずギュッと目を瞑る。だが唇に触れる感触はなく、不思議に思っていると、こつん…と額同士が触れ合った。
驚いて目を開くと、マイキーの顔がドアップにあって、驚いて息を呑む。
「……………」
数秒間を置いて、マイキーが静かに伝える。
「やっぱりもう───オレのモノになって。」
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