第10章 “あの日”のお守り
「じゃあ…またね。」
背を向けてマイキー達の後を追おうとしたカノトに一虎が呼び止める。
「カノト!」
「?」
「"アレ"は…嘘じゃねーから。」
「(アレ…?)」
「オマエを好きだって言った事。」
「!」
「本当にオマエが好きだったんだ。オレの気持ちがオマエに伝わらなくても…オマエを好きだって気持ちに嘘はない。ごめんな…オマエからしたら迷惑なのにさ…」
「…迷惑なんて思わないよ。羽宮くんの気持ちは痛いほど僕に伝わってる。でも僕は…羽宮くんの気持ちに応える事はできない」
「…知ってるよ」
「ごめんね…」
「謝んなよ。オレが一方的に好きになっただけなんだから。オマエを…困らせたかったわけじゃない」
一虎はどこか切なげに言う。
「でも…最後にもう一回、伝えていいか?」
「え?」
「好きだカノト。初めて会ったあの日から、オレはオマエが好きだ。だから…オレを今ここで、フッてくれ。」
「羽宮くん…」
真剣な顔で告白をし、その想いが叶わないと知りながら、真っ直ぐな目を向ける一虎はカノトの答えを待つ。
「……………」
だからこそ、カノトも一虎の想いに答えを出そうとした。真剣に向き合ってくれた一虎の最初で最後の告白に。
「ごめんなさい…。好きな人が…いる。だから羽宮くんの想いには応えられません」
辛そうな顔で頭を下げた。カノトの応えを聞いた一虎はショックを受ける訳でもなく、優しげな笑みで笑った。
「すげェ悔しいなー。オレならオマエを誰よりも幸せにしてやれンのに」
「……………」
「でも…マイキーが好きなんだもんな?」
カノトは顔を上げる。
「やっぱアイツには勝てねェや。オマエがアイツに惚れんのも…分かる気がするしな」
「羽宮くん…」
「もう行け。いつまでも此処にいると警察(サツ)に捕まる。早く戻んねェとマイキーが心配すんぞ」
「…うん。」
「元気でな」
「羽宮くん。死んじゃダメだからね」
「え?」
「ちゃんと更生してもう一度、会いに来て。自殺なんかしたら…絶交だから。」
「なんで……」
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