第10章 “あの日”のお守り
「…嘘だ…」
タケミチは下唇を噛み締め、涙を溢れさせる。カノトは片手で口を覆い、千冬に抱き抱えられた場地を見ながら声を押し殺して泣いた。
「場地さぁぁん!!!」
泣き叫ぶ千冬の声がいつまでも耳に残る。
ゴッ
「殺す」
ドッ
「殺す!!」
場地が死に、マイキーがブチ切れ、一虎の顔を殴り続ける。
「…タケミっち、カノ。やっぱり場地さんは東卍を裏切ってなんかなかった…」
「うん……」
「一人で戦ってたんだ!オレはそれをわかってたのに…わかってたのに…」
「千冬くん…」
「守れなかった!!救えなかった!!」
千冬の悲痛な叫び声がいつまでも消えずに響く。
「…タケミチくん」
「!」
「この抗争を…終わらせなきゃダメだ。場地さんの死を…無駄にしちゃ、ダメだ…っ」
カノトは涙を流しながら言う。
「あ"あ"あ"あ"あ"!!!」
「!」
叫びながらタケミチは一虎とマイキーの間に両手を広げて割って入る。
「どけ…テメェも殺すぞ」
「もうやめましょう!!マイキー君!!!」
ドッ
マイキーに殴られてタケミチは地面に倒れる。それでもタケミチは立ち上がった。
「場地君はこんな事望んでねえよ!!」
ドッ
今度は蹴り飛ばされる。
「テメェが場地を語んじゃねぇよ」
それを見たカノトは力が入らない体を無理やり奮い立たせ、マイキーの前に立つ。
「!」
バチンッ!
悲しみと怒りがごちゃ混ぜになった顔を歪め、振り上げた手をマイキーの頬に向けて引っぱたいた。
全員が驚いて目を見開く中、怒りが収まらないカノトは涙を潤ませながらマイキーに怒る。
「ダメだって言ってるのが分からないんですか!?場地さんが何の為に死を選んだと思ってるんです!?それも分からないんですか!?二人ともいい加減にしてよ…ッ!!!」
ハァハァ…っと息を荒らげ、止まらない涙が溢れ続ける。マイキーは光を無くした目でカノトを見た。
「場地を語んな?死んじまったんだぞ場地君は!!!」
よろめきながら立ち上がったタケミチは制服を脱ぎ捨てた。
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