第10章 “あの日”のお守り
「場地さぁん!!!」
千冬が倒れた場地を抱き抱える。カノトは地面に両手を付いて、涙を浮かべながら真っ青な顔で場地を見つめている。
「場地さん…どぉして…」
ふらりと立ち上がり、ゆっくりと場地の元まで歩いて行き、ドサッと座り込む。
「ハァハァ…宮村…頼みが…ある…」
「!頼み…?」
「マイキーを独りにしないでやってくれ」
「!」
「アイツが堕ちそうになったら…手を差し伸べてやってくれ。もし堕ちても…ちゃんと戻って来られるように…手を握っててやって欲しい。アイツが…道に迷わずオマエのところにちゃんと、帰って来られるように」
「っ…………」
「…頼まれてくれるか?」
「はい……っ!」
涙でぐちゃぐちゃの顔で頷いた。それを聞いた場地はニッと笑う。それを見てカノトはまた泣きそうになった。
場地はタケミチに視線を移す。
「タケミチ。オマエはどこか真一郎君に似てる。東卍を…オマエに託す!!」
「ダメだよ場地君。そんな事言わないで!!」
「場地さん…お願いです。死なないでください…もっと貴方と仲良くなりたいんです!!」
「!」
『真一郎の知り合い?』
『へぇ…なら俺の知り合いでもあるな』
『俺、真一郎の親友ってやつ。』
『場地圭介かぁ。いい名前じゃん。』
『よしケースケ。俺ともっと仲良くなろうぜ』
「……………」
死ぬ間際の走馬灯だろうか。場地の脳裏に黒髪に深緑色の目をした男の笑う姿が思い起こされた。
「オマエ……」
場地は驚いた顔でカノトを見る。
「………?」
「そうか…“あの人”の…」
「え?」
ボソッと小さく何かを呟き、場地は口許に笑みを湛えた。そして千冬に静かに語りかける。
「………、千冬ぅ。」
「ハイ」
「ペヤング食いてぇな」
「………、買ってきますよ」
「半分コ、な?」
その懐かしいやり取りに千冬はぶわっと涙を流す。それを見た場地はニッと笑う。
「ありがとな、千冬…」
千冬に感謝の言葉を伝えると、場地は目を閉じた。
「場地さん…?」
動かなくなった場地をグッと引き寄せる。
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