第9章 東卍vs.芭流覇羅
「……………」
これまでに多くの患者を診察し、見てきた。救急車で運ばれてきた怪我人も何度も見てきた。看護師としての経験は決して長くはないが、多くの患者と接して来たからこそ、看護師にしか分からない事もある。
「(まさか……)」
驚いた顔で場地を見た。
「さて」
参番隊を前に場地は深く息を吐いた。
「参番隊50人vs.1(オレ)!!」
口で髪ゴムを咥え、下ろしていた髪を束ねる。
「上等上等」
闘志の宿す力強い目でニヤリと笑った。
「いくぞオラァァ!!」
鉄パイプを片手に場地は参番隊のメンバーに突っ込んで行く。流石に50人も相手に無茶だと思われたが、場地は圧倒的な強さで次々と薙ぎ倒し、そして──……
「チェックメイトだ、稀咲ぃ」
その喉元に鉄パイプを突きつけた。
「(凄い、場地さん!)」
場地の活躍に感動して笑う。
「やれるもんならやってみろ!」
稀咲は臆する事なく、強気な態度で場地を見上げる。
「……………」
「…………?」
場地は稀咲に鉄パイプを突き付けたまま、動かない。カノトは不思議そうに場地を見る。
「場地さん?」
名前を呼んだ直後、ボタボタッと赤い血が車の上に落ちる。
「クソッ」
ゴホッと咳き込んだ場地の口から血が吐き出される。先程の血は、場地の刺された背中から出血して滴り落ちたものだった。
「ここまでか…」
悔しそうに笑った場地がドサッとその場に座り込む。それを見たカノト達は驚き、千冬が稀咲に怒る。
「稀咲テメー何をしたぁ!!」
「見てたろ?オレは何もしてねぇ」
「(確かに…稀咲は場地さんに触れていない。でも場地さんは吐血した。ということはやっぱり…!!)」
バッと立ち上がり、マイキーの傍を離れたカノトは足場の悪い車を滑り落ちそうになりながらも降り、血を流して倒れている場地に駆け寄った。
「場地さん!聞こえますか!」
「カノ!場地さんが…!」
「分かってる!!」
カノトはすぐに出血の原因を調べた。
「体内出血…。っ、千冬くん!場地さんの体を少し傾けて!」
「え?」
「背中を見せて!!」
.