第9章 東卍vs.芭流覇羅
あまりの気迫に千冬は驚いたが、カノトに言われた通り、場地の体を少し傾け、背中が見えるようにしてくれた。
「やっぱり…“ここ”から出血してる」
「ドコだ!?」
「刺されたところだよ」
「刺されたって…いつ!?」
「カスリ傷なんかじゃなかったんだ!本当は重傷だったんだよ!!」
「……!!一虎…」
場地が一虎に刺された事を思い出した千冬が立ち上がり、声を荒らげた。
「一虎ああ!!!」
怒りで叫ぶも、千冬の声は届いておらず、力が抜けたように座り込んだ一虎は、見張った目で一点を見つめたまま、小さい声でブツブツと何かを言っていた。
「場地さん!しっかりしてください!」
呼び掛けるも、場地の意識は戻らない。
「(ここには医療道具もない。出血を止める物もない。これで場地さんが死んだら、その連鎖で稀咲の思う壷。)」
あぁ…なんて無力なの
「(死にかけてる人がいるのに、助ける事もできないなんて…看護師として失格だよ!!)」
悔しくて、涙が溢れそうだった。
「場地さん…死なないで…」
場地の体にそっと触れる。
「やっぱヤベぇ奴だな一虎は!」
「(え?)」
「そうか!場地を芭流覇羅に引き抜いたのはこうやって寝首をかくためか!!」
「(何を白々しい事を…)」
「ねぇ?総長。」
意識を取り戻したマイキーに稀咲はわざと煽るように言う。
「違う、羽宮くんは」
だめ 稀咲に耳を貸しちゃ…
「殺したかった…」
ひゅっと息を呑んだ。
「ずっと…一虎(テメー)が年少から出てきたら真っ先にオレが殺そうと思ってた。そんなオレを諭し続けてくれてたのが場地だった」
静かに語るマイキーが積み上がった車を降りて行く。
「場地が言ってた。“一虎はマイキーを喜ばせたかった”“だからあいつは受け入れられない”“たとえマイキーの兄貴を殺しちまっても”“自分を肯定する為にマイキーを敵にするしかなかった…”ってよー」
ぞくっ
「(凄くキレてるハズなのに、顔に表情がない…)」
そこまでキレているマイキーを見るのは初めてだった。車を降りたマイキーはツカツカとドラケンと半間の元に歩いていく。
.