第9章 東卍vs.芭流覇羅
「千冬!!一緒に場地君止めんぞ!!」
「ダメだ、タケミっち」
「え!?」
「オレは…場地さんを殴れねー」
千冬は悲しげに涙を流した。
「…千冬くん」
そこでふと気付く。
「(え!?羽宮くんがいない!?)」
マイキーの隣で倒れていたはずの一虎が、いつの間にか消えていた。
「どこに…」
そこでハッとして場地に視線を戻す。
「場地さん逃げて…!!!」
「!!」
ドスッ
「死ね…場地…」
ナイフを持った一虎が場地の背中を突き刺す。恨みを込めたように言葉を吐き出し、更にナイフを深く突き刺した。
「羽宮くん!!!」
「うおおおおおおお!!」
真っ青になって一虎の名前を呼ぶ。そしてタケミチが一虎に勢いよくぶつかり、弾き飛ばした。
「場地君!?大丈夫っスか!?」
「カスリ傷だ。助かったぜタケミチ」
背中を刺された場地は平気そうにしている。それを見てホッと安堵の表情を浮かべた。
「オマエもな、宮村。叫んでくれなかったら反応が遅れてた。オマエの声は遠くにいても良く通るな」
「場地さん…」
羽宮くんは場地さんを殺さなかった
ということは…
「(場地さんを…救えた…?)」
じゃあ…もうマイキーくんが羽宮くんを殺す理由はない!!
「(嬉しいはずなのに…なんだろう…心がスッキリしない。)」
抗争が始まって
マイキーくんがやられて…
稀咲がマイキーくんを助けて
場地さんが稀咲を襲って
羽宮くんが場地さんを刺した…
メチャクチャだけど
全てが良い方向に進んでる
「それなのに…この胸騒ぎは何?」
不安げに場地を見る。
「!」
微かな異変に気付いた。
「(分かりづらいけど…場地さんの表情が焦ってるように見える。)」
そもそも羽宮くんに深く刺されて
全く平気だと云う事はないはずだ
「(…カスリ傷?ううん、そんな筈ない。羽宮くんは更に深く突き刺してた。あれだけ刺されれば、きっと致命傷を追う。なのに場地さんは平気な顔をしている。)」
血が出ていてもおかしくない
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