第9章 東卍vs.芭流覇羅
「大将の首殺ったぞコラァァ!!」
直にやって来る強烈な痛みにギュッと目を瞑った瞬間───。
ドゴッ
突然現れた稀咲が黒マスク男を殴りつけ、頭を足で踏み付けた。
「(え?稀咲…?)」
「東京卍會、参番隊隊長、稀咲鉄太。大将はウチの隊が責任持って守らせてもらう!!」
今まで姿を見せなかった稀咲の登場にも驚いたが、倒れている黒マスクの男に視線を移す。
「(あれ?この男…どこかで?)」
じっと観察すると思い出したようにハッとした表情を浮かべる。
「(あの時すれ違った三人組の黒マスク!!…てことは…稀咲の手下!?え…どういうこと?)」
稀咲の手下なのに
稀咲に殴り飛ばされた?
「(一体、何がどうなって…)」
訳が分からず混乱していると、下の方で東卍のメンバーや三ツ谷達からマイキーを守った事で、稀咲に称賛の声が上がっている。
「(そっか…稀咲はこの抗争で東卍が勝とうが負けようがどっちでもよかったんだ!!)」
東卍が負けたら芭流覇羅として吸収
東卍が勝ったらこうやって活躍して成り上がって
この抗争がどっちに転んでも
東卍を乗っ取られる計算だったんだ!!
「…何、それ。知らない内に、結局稀咲の手の中だったってわけ…?」
力が抜けたように稀咲を見る。きっと自分と同じように稀咲の思惑に気付いた人もいるだろうとタケミチを見た。
「(…わかるよタケミチくん。私も…泣きそう。最初から…稀咲の思惑通りに動かされていたなんて…悔しいよね?)」
眉を顰めて稀咲を睨む。
「(稀咲鉄太。半間共々なんて忌々しい。ズル賢くて、卑怯な考えの持ち主…!!)」
その視線を感じ取ったのか、背中を向けていた稀咲が振り向き、険しい顔でカノトを冷たく睨みつけている。
「稀咲!!よくやった!!マイキーを任せた!!」
「違う…ドラケンくん。こいつは…稀咲は…」
絶望しかけたその時、足場の悪い車を素早く登り、稀咲の背後に回って、鉄パイプを振り翳す人物が現れる。
「この時を待ってたぜ」
「!!」
「稀咲ッ!!」
場地が稀咲を鉄パイプで殴り飛ばす。
「場地さん!?」
思い切り殴り飛ばされた稀咲は下の車に落下した。
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