第9章 東卍vs.芭流覇羅
「大人しく従え。じゃねェと…この腕へし折って、こっから突き落とすゾ」
カノトは目を瞑り、ぶんぶんと首を振る。
無表情の一虎が掴んでいる腕に力を入れる。ミシッという痛みに思わず顔をしかめた。
「一虎、コイツに触んなっつったろ。その手、放せ」
「あ?オレに指図してんじゃねーよ」
「テメェの相手はオレだろ。コイツを巻き込むな。…カノ、危ねーからオレから離れてろ」
「マイキーくん…」
「オレを信じろ」
繋がれた手がギュッと控えめに握られる。その手は相変わらずあたたかくて、安心させるような手のぬくもりだった。
「……………」
本当は放したくない。マイキーに握られた手と、一虎に掴まれた腕。力もぬくもりも、マイキーの方が優しかった。
カノトはスッとマイキーの手を放す。ぐっと一虎に腕を引かれ、後ろに引っ張られると、一虎が鉄パイプをマイキーに向けて振り抜いた。
ガンッ
「っ………!!」
マイキーが殴られ、血がビチャッと車のボンネットに飛び散る。カノトはギュッと目を瞑り、両手で耳を塞いだ。
ゴッ
一虎は無抵抗のマイキーを何度も鉄パイプで殴り続ける。ギャラリー達も“マイキーの負けだ”と口を揃えて言う。
「(このままだとマイキーが死んじゃう。兄さんを失って…マイキーくんまで…)」
『カノ』
兄さん
『カノ〜!』
マイキーくん
「(…何をしているの私。羽宮くんを止めないとでしょ。こんなところで怯えてないで、しっかりしてよ───!!)」
目を開け、立ち上がるとまだ殴り続けている一虎に後ろから抱き着いた。
「!!」
「もう充分でしょ…やめてよ羽宮くん。それ以上やったらマイキーくんが死んじゃう…」
「マイキーの心配なんかすんなよ」
こっちを向いた一虎が泣きそうな顔をしているカノトを見て言った。
「抗争、やめてやろうか」
「え?」
「オマエはオレらが争って傷付け合う姿は見たくねーんだろ?なら、やめてやってもいい」
「本当!?」
思わぬ発言にパッと嬉しそうな顔を浮かべる。
「その代わり、条件がある」
「条件?」
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