第9章 東卍vs.芭流覇羅
不安が一気に押し寄せ、涙が溢れそうになった。
「…泣くな、カノ」
「!マイキーくん…!」
気を失っていたマイキーがムク…っと膝に手をついて起き上がり、泣きそうな顔をしているカノトの目に溜まった涙を親指で優しく拭う。
「血が…頭から血が出てるよ…っ」
「このくらい平気だ。オマエの方が女なのに殴られて痛かったろ?」
「何でこんな時まで僕の心配するんですか…僕より酷いのはマイキーくんなのに…」
「好きな女の心配すんのは当たり前だろ」
「!」
「オマエをアイツに渡すつもりはねェ。オマエはオレをずっと好きでいてくんなきゃ。何があっても絶対に守ってやるから、いつもみたいに笑ってろ」
「はい…!」
この人は…どこまで優しいんだろう
明らかにマイキーくんの方が酷いのに
自分より私の心配をしてくれるなんて
あぁ…やっぱり好きだなぁ
「ん。」
優しく笑いかけ、そしてカノトに向けていた笑みを消したマイキーは一虎に視線を移した。
「一個だけ教えてくれ、一虎。」
「あん?」
「オレはオマエの敵か?」
マイキーの質問に一虎が驚いた顔で固まる。
「オレは、オマエのせいで苦しんだ。オマエのせいで年少にいたんだ」
「は?何言ってんだテメェ」
「敵に決まってんだろーが!!」
ピキッと目の下に青筋を立てる。
「知ってるか?マイキー。“人”を殺すのは“悪者”。でも“敵”を殺すのは、」
車を伝って一番上まで登り、背を向けて両手を広げた一虎が、首だけを後ろに回し、鈴のピアスを鳴らしながら言った。
「“英雄”だ!!」
「何、言ってるの…?」
「しっかり押さえとけよ」
幹部の二人がマイキーの体を押さえようとして、咄嗟にマイキーの手を掴む。
「や……っ!」
「カノト。そいつの手を離せ」
「もうやめようよ!羽宮くん!」
「やめねーよ」
ガッと腕を掴まれ、マイキーから引き離そうとする。
「離して!!」
「そんなにオレに触られるのが嫌かよ。マイキーならいいってか?」
一虎は自分とマイキーの扱いの差に苛立ち、カノトを嘲笑する。
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