第9章 東卍vs.芭流覇羅
「どうして僕なの…?」
「それを答えれば、オマエはオレのとこに来てくれんのか?」
「それは…」
「なぁカノト。その首のキスマーク、オレのが上書きされてンだけど、付けたの…マイキーか?」
「!!」
「上手く隠せてると思ってるみてェだけど、ギリ見えてっから」
一虎に指摘され、咄嗟に首を手で押さえる。
「何だよオマエら…そういう仲?」
「……………」
「否定、しないんだな…」
リンと鈴のピアスが悲しげに揺れた。
「マイキーに絆されて馬鹿じゃねーの」
「馬鹿じゃないよ…」
「オレの方がオマエと長くいたじゃん。アイス食って、どうでもいい話で盛り上がって、ずっと一緒だったのにさ…何でオレより付き合いが短ぇアイツが…オマエの心を奪ってくんだよ」
「羽宮くん…」
一虎は鉄パイプを握り締め、地を蹴って飛ぶと、二人に押さえつけられているマイキーの頭目掛けて思い切り鉄パイプを振った。
「殺ったぁ!!」
「!!」
「ダメ!!羽宮くん!!」
ゴキッ
「っ、マイキーくん!!」
殴られたマイキーは倒れた。
「芭流覇羅(オレら)の勝ちだ」
足場の悪い車を降りながら慌ててマイキーに駆け寄り、声を掛ける。
「マイキーくん!!マイキーくん…!!」
ぐったりしているマイキーの姿を見て、涙がじんわりと浮かぶのが分かった。
「羽宮くん!!」
「何だよカノト、怒ってんの?」
「当たり前だろ!!」
「そっか…誰かを傷付ければ、オマエはそうやってオレを見てくれんだな」
「こんな卑怯な真似して!!マイキーくんは一人で戦ってるんだから羽宮くんも一人で戦ってよ!!」
「卑怯?誰がタイマンで勝負するなんて言った?何の為にオレがコイツらを用意したと思ってる。全部、マイキーを殺す為だ」
「どうしてそんなになっちゃったの羽宮くん!!昔は…昔はもっと───」
「いつまでもあの頃のオレでいると思うなよ。オレはもうあの頃とは違う。オマエの中の“羽宮一虎”はとっくの前に死んだんだ」
羽宮くんの目を見て分かった
本当に…変わってしまったんだ
「(羽宮くんを…説得できないかも知れない。)」
.