第9章 東卍vs.芭流覇羅
弾き飛んだ男は資材の山に突っ込み、気絶した。どよめきが起こる中、カノトはまだ痛みが残る頬に触れ、低い声で言う。
「痣が残ったら…一生恨んでやる」
言葉に殺意を乗せ、その場を立ち去り、どうにか車の近くまで来る事ができた。
「(微かに上から話し声が聞こえる…)」
積み上がった車を見上げ、マイキーがくれたネックレスをギュッと握り締め、足場の悪い車を登り始めた。
✤ ✤ ✤
「一虎、テメェ、タイマンも張れねぇのか?」
「タイマン?誰がそんな約束したよ?」
リンと鈴のピアスが音を鳴らして揺れる。
「コイツらは対マイキー用に用意した。オレのいた少年院で最強だった、ケンカのエキスパートだ」
「よーく観察したぞぉマイキー」
「強えー奴なんて大概ウワサだけだろ」
「行くぜマイキー!!」
芭流覇羅の幹部であるチョンボが地を蹴り、拳を振り翳しながらマイキーに突っ込む。それを片手で受け止めた無表情のマイキーにもう一人の幹部であるチョメが焦ったように叫ぶ。
「チョンボ離れろ!!」
マイキーの得意の蹴りがチョンボを狙うも、ギリギリの所で躱し、難を逃れた。敵を外した事でマイキーの蹴りはチョンボの後ろにある車の前部分を破壊し、力強くめり込んだ。
「危っぶね!!!」
「ちっ、ちょこまかと」
「コイツはホンモノだぁ…」
「なんでテメーをここに誘い込んだと思う?マイキー」
「!」
車の上に立つマイキーの前後を幹部二人が挟んで立っている。
「この足場の悪さじゃあテメーの自慢の核弾頭みてーなケリもうまくキマんねーだろ!?」
ガッ
「!?」
首を傾けて笑う一虎の肩を後ろから誰かが掴む。驚いた一虎が咄嗟に振り返ると…
「羽宮くん───!!」
少し息を切らしたカノトがいた。
「カノ…!」
「…カノト」
「やっと…登りきったぁ…」
足場の悪さに何度滑り落ちそうになったか。その度に冷や汗を流し、バクバクと脈打つ心臓を抑え込んだ。
「何でオマエが此処にいんの?」
「羽宮くんを止めに来た」
「あ?」
「こんな事…もう、終わりにしよう」
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