第9章 東卍vs.芭流覇羅
「な、何だコイツ!?一瞬で倒しちまいやがったぞ!?」
「つーか見たかよ今の!!チビのくせに背負い投げ一本で勝っちまったぞ!?」
「マジかよ…」
「何者なんだあのクソイケメン野郎は!?」
「(“クソ”は余計なんですけど。)」
あー…注目されてる
あまり目立ちたくないんだけどな…
「お!勇者チャン見ーっけ!」
「!!」
ドラケンと対峙していた半間が今の騒動でカノトの姿を視界に捉える。
「姿が見えねーと思ったらそっちにいたのかよ。ま、探す手間が省けて良かったわ」
「(…半間。)」
「おい、テメーの相手はオレだろうが。余所見してんじゃねーぞ」
「安心しろ。テメーの相手はきっちりしてやるからよぉ。つーわけで!すぐにコイツを倒したら勇者チャンのトコに駆け付けてやっからもう少しだけ待っててな!」
「来なくていいです!!」
「ヒャハ♪そう拒絶されっと…ますます手に入れたくなるじゃんか」
狙った獲物は逃がさないというような目で見られ、カノトはぞくりと身を震わせる。
「(今の私は弐番隊の一員なんだから三ツ谷くんの迷惑にならないようにしないと…!!)」
とりあえず半間の視界から外れるようにその場から動く。人混みに紛れて姿を消したカノトを見て半間は残念そうに呟く。
「まーた逃げちまった。やっぱ一筋縄じゃいかねーなァ…」
それでも半間は不気味に笑う。
「何でそこまでアイツに執着する?」
「…テメーには分からねェだろうな。その“執着”っつーのがねェと、勇者チャンはオレじゃなく、マイキーを選ぶからに決まってンだろーが。」
「……………」
ドラケンは鋭い目で半間を睨みつけている。
「マイキーは勇者チャンの運命の相手じゃねェ。アイツには勇者チャンの優しさは理解できねェ。勇者チャンが優しさを向けていいのはオレだけだからな」
「さっきから何キモい事言ってんだ。テメーがカノの運命の相手な訳ねーだろ。そうやって被害妄想膨らませて、アイツを怯えさせんじゃねェよ」
「…そうか。テメーも勇者チャンの『大事なもの』の一人なのか」
「?」
「ならテメーも壊さねーとなァ…!!」
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