第8章 寂しがりな君に贈るキス
「…上書き、していい?」
「…はい」
「どうせならアイツよりオレのでシルシ付けたい。そんでさ、鏡見るたびにオレのこと思い出して、恥ずかしがればいい」
「なかなかのドS発言ですね」
「オマエにだけな」
ふと笑ったマイキーが首筋に唇を押し当て、強く吸い付いた。“んっ…”と変な声が出てしまい、慌てて口を噤む。時折“はっ…”という吐息が首筋に当たり、ぞくっと体が震える。
「あっ……」
「えっろい声。」
あたたかくて柔らかい舌を這わせ、何度もそこに吸い付いて、また舌を這わせの繰り返しに、恥ずかしくなって、マイキーの服をギュッと握りしめる。
「(羽宮くんの時はあんなに嫌で気持ち悪かったのに…マイキーくんの時はそれを一切感じさせない。むしろ、気持ちよくて…)」
「カノ」
「…はい」
「カノ…」
「はい、マイキーくん」
切なげに名前を呼ばれ、それに優しく返す。まだ外は明るい。二人の少年少女がベッドの上でお互いの存在を確かめ合うように触れ合う。
首元から顔を離したマイキーが新しく色づいたそこに手を伸ばし、優しく撫でる。
「…オレのっていう、シルシ。」
「!」
「腕、痛かった?」
「引っ張られた時は驚きましたけど、痛くはなかったです」
「…オマエが一虎のものになっちまうんじゃないかって、焦った。オレから離れて行くんじゃないかって。そう思ったら周りが見えなくなってた」
頬に手を遣り、すりっと撫でる。
「オレ…おかしいのかな。オマエの事になると、いっつもダメだ。自分で自分を抑えられない」
「…おかしくなんか、ないです。…あまり理不尽な事は言えませんけど…マイキーくんがそこまでして僕を気にかけてくれるのは…貴方が“私”を大事に想ってくれてるからだと思います」
「…優しいなぁ、カノは。本当に優しくて…オレが何をしてもオマエなら許してくれるって思っちゃう」
儚げに笑んだマイキーは押し倒しているカノトの手を掴み、引っ張り起こす。そして自分も座るとお互いに見つめ合う。
「カノ。仲直りのぎゅー、しよ?」
両手を広げたマイキーに笑い、その胸に飛び込んだ。
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