第8章 寂しがりな君に贈るキス
「…お邪魔します」
扉を開けると確かに鍵は掛かっていなかった。そろりと靴を脱ぎ揃え、緊張した面持ちでマイキーの部屋に直行する。
「(マイキーくんの声…冷たくて怖かった。怒らせるような事は何もしてないはずなんだけど…)」
不安になりつつも、マイキーの部屋の前に着いたカノトは、ゆっくりと扉を開けた。
「!?」
部屋の奥から突如伸びてきた手が腕をガシッと掴み、グイッと力強く引きずり込まれる。
驚いて声を発するのも忘れていたカノトは引っ張られる様な形でベッドに押し倒された。
「え!?」
絡めるように繋がれた両手はベッドに縫い付けられ、起き上がろうとしてもマイキーが覆い被さっている為、それは叶わなかった。
「マイキー…くん?」
「…その絆創膏、どうした?」
ギクリと身体が跳ねる。友人に聞かれた事と同じ答えを返せばいい。分かっているのに…自分を見下ろすマイキーの目に光が無い事に気付き、息を呑む。
「なぁ、どうしたって聞いてんだけど?」
「あ…虫に刺されて…」
「……虫、ね」
首に手を伸ばし、ぺりっと絆創膏を引き剥がす。そこには昨日一虎が強引につけた赤い印がまだ色強く残っている。
「どこが虫に刺されただよ。どう見てもキスマークだろ、これ。」
「!!」
「嘘吐いてんじゃねぇよ」
ギリッと握られた手に力を込める。
「いっ……」
「オマエさ、片耳に鈴のピアス付けてる男知ってる?」
それを聞いてすぐに一虎だと分かったカノトは咄嗟にマイキーから視線を逸らしてしまう。それを見たマイキーが冷たく笑った。
「ホント…嘘吐けねぇ性格だな」
「あ、あのマイキーく…」
「なんで一虎の事黙ってた」
感情のない顔で低く呟かれ、ぞわっと身を震わせた。マイキーはハイライトを無くした目で、青ざめているカノトをじっと見つめている。
「だ、黙ってたわけじゃ…」
「オマエあいつとどういう関係?」
「羽宮くんは…友達です」
「…東卍の奴がさ、偶然見てたらしいんだ。オマエがアイツに無理やり襲われてるところを」
「!!」
「これ…一虎に付けられたのか」
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