第8章 寂しがりな君に贈るキス
「場地さんはきっと引きません。抗争は東卍の“敵”として対立すると思います。でも…僕は信じたいんです。場地さんは必ず東卍に戻って来ると」
「………!」
「それで…運命は変わると。ですから“総長”としてのマイキーくんではなく、“佐野万次郎”としての気持ちをみんなに伝えれば大丈夫ですよ」
カノトの言葉に驚いたように目を見張ったマイキーだが、すぐに嬉しそうに口許を緩め、カノトを見る。
「そっか…オレ自身の気持ちか」
「はい」
「カノはすごいな。オマエの言葉一つで不思議と力をもらえる。もしかして魔法使い?」
「魔法使いなら抗争も止めてます。でもマイキーくんが少しでも元気になってくれたなら良かったです」
目を細めてニコリと微笑む。
「笑った顔が可愛いからちゅーしていい?」
「あ…あんまりキスばっかしないでください」
「気持ちよくて泣いちゃうもんな」
「違います…!!」
カッと頬を紅潮させる。
「カノ」
「う……」
じっと見つめられ、言葉を濁す。
「嫌なら突き飛ばして」
「…できないって知ってるくせに」
「うん。オマエに突き飛ばされたら一生立ち直れないから大人しくキスさせて」
「いじわる…」
「ごめんな?」
全く悪びれていない様子でクスッと笑い、頬を膨らませているカノトに顔を寄せ、お互いに目を閉じ、唇を重ねた───。
✤ ✤ ✤
翌日────。
「久しぶりだなカノト!」
「羽宮くん」
待ち合わせ場所で一虎を待っていると、少し遅れてやって来た一虎が、後ろからガシッとカノトの肩に腕を回し、現れた。
「あれから会ってなかったけど元気してた?」
「僕はいつも通りだよ。そういう羽宮くんこそ元気だった?」
「オレもいつも通り」
首を少し傾けると鈴のピアスが鳴った。
「それでオレを呼び出したのは何の用?あ、デートの誘い?カノトなら大歓迎だよ」
「もう何言ってるの羽宮くん…。今日羽宮くんを呼び出したのは…東卍と芭流覇羅の抗争についてなんだ」
ピクッ
「何でオマエが知ってんの?」
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