第8章 寂しがりな君に贈るキス
さっきまでの笑顔が一瞬にして消え、冷たい声で一虎はカノトを見た。
「オレ、オマエに抗争があること伝えてねぇよな?…誰から聞いた?」
「……………」
「言わなくても分かるよ。タケミチだろ?アイツから聞いた。そうなんだろ?」
「そうだよ…」
「チッ…アイツ余計な事しやがって。」
苛立つように一虎は小さく舌打ちをする。
「あのさ…羽宮くん…」
「…何。」
「抗争…やめない?」
「あ……?」
今まで聞いたこともないような低い声で呟かれ、ぞくりと身を震わせる。
「何でカノトがオレらの世界に首突っ込んでんの?オマエは関係ないだろ?」
「……………」
「まさか…東卍の連中に肩入れしてんの?オマエ…東卍の味方?だから抗争なんて止めろって言ってんのか?」
「違う!そうじゃなくて…」
言葉に詰まりながら一虎を真っ直ぐ見る。
「この抗争で羽宮くんは一番大事なものを失ってしまうと思うんだ」
「は?」
「失ってから後悔しても遅い。だから羽宮くん…大事なものを失う前に今進んでいる道を引き返して」
「言ってる意味がわかんねーよ。要するにオマエはオレの敵って事なんだろ?」
「…友達だよ」
「!」
「僕は羽宮くんの友達だよ。敵になったら悲しいよ…」
「ハッ、“友達”ねェ…」
嘲笑うように目元を歪めた一虎はカノトの腕を引き、冷たい壁に押さえつけた。
「痛っ…え?羽宮くん…?」
「…オレはオマエを友達として見てねぇよ」
「どういうこと…?」
「“こういうこと”」
ぐっと一虎の顔が首元に寄せられ、唇が肌に吸い付いた。その途端、ぞわっと身を震わせたカノトが慌てて引き離そうとする。
「んっ!は、羽宮くん…!?何してるの!?離れて…!!」
「肌しっろ…はっ…んっ」
「あっ!」
もがいても強く押さえ付けられている為、身動きが取れず、ただただ一虎に首筋を吸われている快感だけが襲う。
「や、だっ…離してよ羽宮くん…っ!」
「……………」
「何でこんなことするの…っ?」
「…友達の関係を壊したいからだよ」
「え?」
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