第8章 寂しがりな君に贈るキス
「約束してくれ…」
「あの日約束したじゃないですか。僕はずっとマイキーくんの傍にいます。何も告げずにマイキーくんの前からいなくなったりしません」
安心させるように笑って言えば、マイキーもどこか力なく笑う。
「…そうだったな。もしオレから離れたらベッドに押さえつけて無理矢理ちゅーする約束だったな」
「それはマイキーくんが勝手にした約束じゃないですか」
「あとオレに膝枕して、ゲームして遊んで、ぎゅーって抱きしめて、唇にちゅーして、もっかいぎゅーからのちゅーする約束もしてたんだった」
「…その約束も交わした覚えはないです」
「なら約束させよっか。オレから離れんなよカノ。約束破ったらマジで実行するから」
「……………」
「返事は?」
「…はい」
「ん、いい子」
わしゃわしゃと髪を撫で回される。
「ピン留めがズレる…!」
「オレが留め直してあげる」
「え、自分で直すからいいで……んっ」
「耳、触れるの気持ちいい?」
ズレたピン留めを直そうと手を伸ばしたマイキーが耳にそっと触れ、ピクッと反応してしまった。
「何で触るんですか…っ」
「今の顔すげーえっち。こーやって優しく擦られるの好き?」
「えっ、んっ、ちょっと…!」
「耳たぶ柔らか…」
「ま、マイキーくん…!」
焦ってマイキーの手を退かそうとするが…
「噛んでいい?」
「だ、だめです!もう離れて!」
「離れたら約束破ったってコトでベッドに押さえつけて無理矢理ちゅーな」
「そ、そんな…!や、あ…っ」
「っ………!」
耳元に顔を寄せたマイキーが小さくて柔らかそうな耳たぶに軽く歯を立てた。するとビクッと体を跳ねさせたカノトから普段とはかけ離れた可愛らしい声が出て、驚いたマイキーがピシッと固まる。
「今の声…寝惚けてた時のあの声?」
「(しまった…!)」
既に遅いが、ハッとして、慌てて手で口を押さえる。
「もしかしていつもの声作ってんの…?」
「…まぁ、はい…。男装中は声作ってます。流石に男の格好で女の声はまずいので…」
「…もっかい聞きたい。」
「え?」
「素の声、もう一回聞かせて?」
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