第8章 寂しがりな君に贈るキス
「最初からそっち飲む気だったんですね」
「うん」
「だったら言ってくれればいいのに」
「二つ分オマエ一人に作らせんのも悪いじゃん。オレの作ったやつも美味いから飲んで」
「じゃあ…いただきます」
少しぬるめのココアをコクッと喉の奥に流し込む。ほわっと体の奥から温まる気がしてきて、頬を緩める。
「あったかいのも美味しいですね!」
「隠し味が利いてんじゃね?」
「何か入ってるんですか?」
「カノが大好きっていうオレからの愛情♥」
「なっ……!」
目を閉じニコリと微笑まれ、不意打ちを食らったカノトはぶわっと赤くなる。
「カノも入れてくれたんでしょ?オレが大好き〜!っていう愛情♥」
「い、入れてるわけないでしょう…!?」
「えーこのココアがそういう味なんだけど?めちゃくちゃ甘くて、たくさんちゅーしたいよーてオレに訴えかけてる味。」
「で、デタラメ言わないで…!」
「ね、ちゅーする?」
「!」
マイキーが妖艶な口許を湛え、ぐっと距離を縮めてくる。
「しないですから!何で寄ってくるんです…!」
「んーカノの愛情に酔っちゃったかも?」
「アルコール含んでませんけど!?」
ニコニコ顔で迫ってくるマイキーに“危機感”を感じたカノトは後ろに下がろうとするが…
「(壁!!逃げ道なし!?)」
「もう逃げらんねーな?」
「楽しそうに言わないでください…」
「困ってる顔もすげー好き。」
「……………」
「そうやって目を逸らして膨れンのも照れ隠しだって知ってる」
「(見透かされてる…)」
悔しい……
「なぁカノ…オマエも今回の抗争に参加するつもりか?」
「そのつもりです…けど…」
「…あそこには半間もいる。芭流覇羅の連中だってごまんといる。そんなトコに正直オマエを連れて行かせたくねぇ」
「マイキーくん…」
「オマエに何かあったら…オレは…」
「大丈夫ですよマイキーくん。僕はこう見えても強いので簡単にやられたりはしません」
「カノが?強がりで言ってない?」
「言ってないです」
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