第8章 寂しがりな君に贈るキス
「ココア…あったかいのと冷たいの、どっちがいいですか?」
「あったかいの」
「じゃあ僕は冷たいのにします。マイキーくん手伝ってください」
「んー」
カップをマイキーの前に置き、買ってきた粉末のココアの袋をピリッと破き、カップの中に投入する。
「そういやカノさー」
「はい?」
「何で男装してんの?」
マイキーがカップにココアを入れながら聞いてきた。
「…男の人に声を掛けられる事が多くて。それで嫌気が差して男の格好なら大丈夫だろうと思ったんです」
「は?誰そいつら。全員シメるから相手の特徴とか教えて。探し出して一人残らず消す」
「怖い事言わないでください…」
「そいつらオマエが可愛いから声掛けてやらしーことしようとしてたんだよ絶対。じゃなきゃ中学生捕まえて声なんてかけねーだろ」
「…そう、なんですかね?」
「…少しは危機感持ってくれないと、オレがオマエに教える羽目になるよ」
「?教えるって何を?」
「“危機感”」
マイキーの言っている意味がイマイチ理解できず、カノトははてなマークを浮かべる。
「んで、ココア入れたら次はどうすんの?」
「マイキーくんはあったかいココアなので事前に温めた牛乳をカップに注ぎ淹れてください。僕は冷たいのなので冷えた牛乳を注ぎます」
温めた牛乳と冷えた牛乳をそれぞれカップに注ぎ、スプーンでかき混ぜる。
「これで完成です!」
「めっちゃ作り方簡単だった!」
「ココアと牛乳さえあれば出来ますもんね」
ココアに牛乳を注ぐだけなので子供でも作れてしまうのが良いところだ。
「じゃあ早速飲みましょうか」
「いただきまーす」
「マイキーくん!そっち冷たいの…」
あろうことかカノトの前にあったカップに手を伸ばし、冷たいココアを飲んだマイキーに驚く。
「甘っ。ココアってこんなに甘かったっけ」
「もう…何で冷たいほう飲んじゃうんですか。マイキーくんが飲みたかったのはあったかい方でしょう?」
「カノが作ったやつが飲みたいって前に言ったじゃん。だからコレはオレの。」
そう言ってマイキーはまた一口飲んだ。
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