第1章 タイムリープ
「始めろ」
男の合図で再び周りが盛り上がる。
「(冗談でしょ?身体の弱い子に喧嘩なんて…。止めなくちゃ───!!)」
カノトが山本を助けようと人混みを掻き分けて前に出ようとした時。
「ちょっと待った!!!」
「タ……」
「タケミチ!」
「(タケミチくん!?)」
そこに現れたタケミチはどこかで喧嘩でもしてきたのか、顔が腫れていた。
「なんだテメーこのヤロー!」
「いやー毎回毎回、似たよーな試合じゃつまんなくないっスか?」
両手を頭の後ろに回し、ぎこちない顔でニッと笑いながらタケミチは段差を下りる。
「もっとおもしれーモン見たいっしょ?」
「(タケミチくん…本当は怖くて怖くて堪らないのに友達のために…)」
「2年坊が出しゃばんじゃねーぞ!!」
「…もっとおもしれーモン?」
「例えばさ」
「(まさか…!)」
「王(キング)vs.奴隷」
タケミチはキヨマサに向かって拳を突き出す。
「キヨマサ先輩。タイマン買ってくれよ」
「(そう…君は変わる努力をするんだね。過去でも未来でも逃げないように。立ち向かう事にしたんだね。)」
カノトはグッと掌を握る。
「あ?」
キヨマサは煙草を咥えながら、タケミチの前でメンチを利かす。
「後悔すんなよ?」
ポーズを取ったキヨマサの渾身のパンチがタケミチの腹部目掛けて放たれた。
「あがっ」
一発で分かるほどの力の差。それはまるでブルドーザーvs.軽自動車。タケミチの身体は簡単に宙を舞い、ドサッと地面に倒れた。
「どーしたぁ花垣ィ!!」
「威勢がいいのは初めだけか!?」
「また一発で終わんじゃねーだろーなぁ!!」
タケミチを煽るように挑発するギャラリー。キヨマサに殴られっぱなしのタケミチは全く歯が立たず、何度も吹っ飛ばされる。
「(こんなの…喧嘩じゃない。ただ一方的に弱い者を甚振るだけの暴力だ。)」
盛り上がる中、キヨマサの強烈な蹴りがよろめくタケミチの顔面に叩き込まれた。
「タケミチくん!!」
ギャラリーを無理やり掻き分け、前に飛び出す。身体もボロボロで鼻血も出てるのに、それでもタケミチは倒れない。
.