第8章 寂しがりな君に贈るキス
「マイキーが堕ちちまった“もう一つの理由”を教えてやろうか」
「もう一つの…理由?」
「オマエがマイキーの傍を離れたからだ」
「え…?」
「東卍と芭流覇羅の抗争を止めようとしたオマエに一虎は“ある条件”を突きつけた。オマエはその条件を受け入れ…マイキーを見捨てて一虎の傍にいる事を選んだんだ」
カノは驚いた顔で言葉を失う。
「それも重なってマイキーは一虎を殺した。オレらの声も届かないくらい、マイキーは一虎に憎しみにも似た怒りをぶつけた。オマエの声すら…アイツには届かなかった」
「……………」
私がマイキーくんより羽宮くんの傍にいることを選んだ…?
羽宮くんは…私になんの条件を出したの?
どうして私は…それを受け入れてしまったの?
「カノ。オレはオマエにマイキーを見ててくれって頼んだはずだぞ。なのに…何でアイツの傍を離れちまったんだ?」
ドラケンの悲しげな目がカノに突き刺さる。タケミチもナオトも驚いた顔でカノとドラケンを見ていた。
「(過去の私に聞きたい。どうしてマイキーくんを見捨ててしまったの…?)」
『───だよ、カノト。』
「!!」
『だからマイキーを捨てて…』
「(何、これ…?)」
狂気を孕んだ目で自分に手を差し伸べる一虎の光景が脳裏に思い浮かんだ。
✤ ✤ ✤
「マイキー君は絶ッ対ェ人を殺したりしない。わかってんのに…信じてるのに…ドラケン君と話してるとなぜか浮かんでくるんだ。その時の光景がっ!!」
留置所を出て三人で歩いていると涙を浮かべたタケミチが震える声で言った。
「どうして出てくんのかわかんねぇけど、憶えてないはずの記憶が溢れ出てくるんだ!!!」
「タケミチくん…」
「倒れてる場地君…一虎君。そして血まみれのマイキー君。全部本当なのかなんてわかんねえ!!けど!!あのマイキー君の悲しそうな顔!!オレ、マイキー君を助けないと!!!」
「…タケミチ君」
顔を俯かせ、ポロポロと涙を流すタケミチを見てカノも目に涙が浮かぶ。
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