第8章 寂しがりな君に贈るキス
「そんなの…ありえないじゃないですか!」
「そ、そうですよ!マイキーくんは東卍のトップなんですよ!?」
「ありえない?お前らも覚えてるだろ?」
「(私達もその場にいたの…!?)」
「12年前の“血のハロウィン”、東卍は芭流覇羅に乗っ取られ、芭流覇羅を母体とした新生・東京卍會ができた。それが今の東卍だ」
「(“血のハロウィン”!?)」
「それって…もしかして東卍vs.芭流覇羅の決戦の日…?」
「そう、あの日、東卍は初めて負けた」
「え!?東卍が負けるんスか!!?“無敵のマイキー”がいるのに負けるワケ…っ」
「…いや、マイキーのせいで東卍は負けたんだ」
「…マイキーくんの…せい…?」
「あの日、なんでオレは気付いてやれなかったんだろう…。マイキーの、まだ15歳のガキの背負ったデッケェ十字架を…」
「どういうことですか…?マイキーくんに一体何が…」
「あの日マイキーは一虎を殺した」
「え?」
「(マイキーくんが…羽宮くんを殺した?)」
ドクンッと心臓が嫌な鳴り方をする。胸の辺りをギュッと掴み、顔を俯かせ、信じられないというようにカノは目を見開く。
「マイキーは捕まらなかった。なぜなら稀咲が身代わりを用意したからだ。マイキーは堕ちた」
「っ………!!」
顔を上げ、驚いた表情でドラケンを見た。
「東卍は芭流覇羅に乗っ取られ、総長マイキー、そして“総長代理”稀咲を筆頭とした巨大組織に膨れ上がった。今思えば、稀咲が東卍に入ったのは初めからマイキーが目当てだったんだろうな…」
「ちょっと待ってくださいよ。マイキー君が一虎君を殺した?」
タケミチは隔てている壁にドンッと両手を付け、ショックを受けた顔で俯く。
「嘘だ…マイキー君が人を殺すワケないっ!!」
「…オマエはあの時のマイキーの立場になっても一虎を殺さない自信があるのか?兄を殺した仇だぞ?そしてあの日一虎は…場地を殺したんだぞ!!」
「一虎君が…場地君を?」
「嘘…羽宮くんはそんなことしない!!」
「何でそう言い切れる?」
「え?」
ドラケンは無表情でカノを見る。
「だって…羽宮くんは…」
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