第7章 秘密、バレちゃいました。
翌日────。
「宮村帰んねェの?」
「サラッと予習だけしたら帰るよ」
全ての授業が終わり、クラスメイト達が帰りの支度をして、ぞろぞろと教室を出て行く中、カノトだけは残り、今日の授業の予習をしていた。
「ホント真面目だよなーオマエ。元から頭良いのに何でそんなに勉強すんの?」
「別に頭が良いワケじゃないよ」
「でもテストとかいつも満点じゃん。学力テストも上位に入ってるしさ」
「…うちの家さ、凄く厳しいんだ。子供の頃から何をするにも“良い結果”を残す事が当たり前で…勉強も満点を取らないとご飯も食べさせてくれなかったんだ」
「は?何だよそれ…。テストで満点取らなかっただけで飯抜きとか…虐待に近ぇじゃん」
「実際に手を上げられた事はないから安心して。あの人はそういう“面倒事”は増やさない主義だから」
「あの人って?」
「父親」
少し棘のある言い方に友人は驚いた顔を浮かべる。
「…なぁ、あんま無理すんなよ?」
「あれ?珍しく心配してくれてる?」
「当たり前だろ。友達を心配しねェ奴なんかいねーよ」
「うん。なるべく無理しないように気をつける。勉強も頑張るよ」
「(コイツ絶対無理すんだろ…)」
「次のテストで赤点は回避したいしね」
「オマエが倒れると女子共がうるせーからな、マジで無理だけはすンなよ!」
「うん」
“じゃあな”と手を上げ、友人は教室を出て行った。カノトはノートに視線を落とし、シャーペンを走らせる。
「……………」
ほとんどの生徒が下校した中、教室は静けさに包まれ、時計の秒針だけが耳に響く。
「相変わらずくそ真面目に勉強してんだな」
「!」
すごく近くで聞こえた声に驚いて顔を上げると、前の席の椅子に跨り、こちらを向いて座っている男子中学生がいる。
「?」
「あれ?もしかしてオレのこと忘れられてる…?」
「(なんか…見覚えがあるような…)」
「えー…すげぇショックなんだけど」
落ち込んだ男をじっと観察するように見つめた。
『オレ、羽宮一虎。』
『へぇーカノトか。いい名前じゃん』
『よし決めた!オレと友達になれ!カノト!』
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