第1章 タイムリープ
それからずっと兄さんは
私を守ってくれた
あの厳しい父ですら
私を守ってくれたことはないのに
兄さんだけが…私を守ってくれる
「(この幸せを壊したくない。私には兄さんがいれば…それでいい。)」
「完食!抹茶プリンも美味しかったな!」
「濃厚で美味しかったね」
「ゴミ、捨てるから貸して」
「ありがとう」
空の容器を二つ持ち、マドカはゴミ箱に捨てに行く。その後ろ姿をじっと見つめる。
『お前のことは俺が守ってやる』
「(今度は私が、兄さんを守る番。)」
「カノー、寝る前に風呂入っちゃえよー」
「はーい」
カノトはソファから立ち上がる。
「(神様、私にもチャンスをちょうだい。この人は死ぬべきじゃない。何で兄さんが死ななきゃいけないの?どうして…私の誕生日を祝う前に…いなくならなければいけないの…?)」
リビングを出ると涙が溢れた。
「必ず、兄さんを救ってみせる…!!」
そう、強く決心した。
✤ ✤ ✤
「おい!聞いたかよ宮村!」
「何も聞いてないけど」
「今日もまた喧嘩賭博始めるらしいぜ!」
「…喧嘩賭博」
翌日、休憩時間に廊下に出ていると、クラスメイトの一人が驚いた顔で言ってきた。
「相変わらずおモテのよーで…」
カノトの周りには女の子達が集まっている。羨ましげにこちらを見るクラスメイトにカノトは首を傾げた。
「別に僕、モテないよ?」
「お前の周りにいる女子を見ろ!!」
「みんな僕と話したいんだって」
「それをモテるって言うんだよ!!」
「なに泣いてるの?」
「泣いてねーやい!!ちっとも羨ましいなんて思ってないんだからな!!」
すると女の子達が男子生徒の存在が邪魔だと言うように顔をしかめ、甘えた声でカノトに擦り寄る。
「ねーえ心叶都くん。そんなヤツ放っておいて今日の放課後どっか遊びに行こうよ」
「こんなヤツだと!?」
「何よ」
「お前らずっと宮村にくっ付いて金魚のフンか!どうせソイツの顔目当てだろ!バレバレなんだよ!」
「「ああん?」」
「ひぇっ」
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